School
□休日
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※大学生設定
特に予定があるわけでもなく、バイトもやってるわけでもないので、部屋で一日中ゴロゴロしていようか、と今日の私は計画をしていた。
が、その計画も午前のうちに潰されてしまう。
ピンポーン・・・
珍しく家のインターホンの音が聞こえて、だるい体をベッドから起こして玄関へ向かい、カギを開けて、扉を開ければ、そこには久しぶりに見る人物が立っていた。
「・・・・クロ?」
*
「・・・うちの住所教えてたっけ?」
「おばさんから聞いた」
「あぁ、なるほど・・・」
コーヒーを淹れながら、突然の訪問者がどうして来たのかを考える。
クロは親同士が仲良くて、よく家を行き来していた。
大学に入ってからは私もクロも一人暮らしを始めたので、なかなか会うことはなかったんだけど。
それが急に今日来たのか…
「やっぱりきれいにしてるんだな…」
「え?あぁ、まぁ、今朝片付けたばっかだし」
「昔っから、お前の部屋ってきれいというか、殺風景というか」
「殺風景とは失礼な…。シンプル・イズ・ザ・ベストって言ってください」
「はいはい…」
前と変わらない幼馴染に安堵する。
でも、よく見れば高校まで見てきたクロとも違うような気もする。
昔はジャージばっかだったからか、私服姿はちょっとかっこよく思えるし、
体つきも前にもましてがっちりしたようにも思える。
確か、大学でもバレー部に入ったとか言ってたっけ・・・
それに比べれば、自分は変わらないな・・・
残念に思って心の中で泣いた。
「で、今日は何しにきたの?」
「ん?あぁ・・・」
「何?なんか頼み事?」
「うん、まぁな・・・」
随分とクロにしては珍しく躊躇っている。
なんか頼みにくい内容なのだろうか?
「いや、実はさ・・・
母さんの誕生日プレゼントを、一緒に、選んでほしいんだが・・・」
「おばさんの誕生日プレゼントを・・・?」
「俺、そーゆーの選ぶのって得意じゃねーし、
女の好きそーなモンとかよくわかんねーし・・・
でも、最近まともに連絡取らねーから急に何がほしいとか聞いたら、怪しまれそうだし・・・」
「あぁ、そういうことね」
昔からクロは自分のお母さんのことが大好きだ。
私ももちろん昔から優しくもらってるし、親の帰りが遅くなるときはご飯を一緒にごちそうになったりしたから、好きである。
そんなおばさんに今までのお返し、というわけではないが、何かを送るのもいいかと思った。
「いいよ。なら、一緒に買いに行こうか」
*
とりあえず、クロ曰くよく使うようなものを送りたいということだったので、日常雑貨などの店が並ぶ駅の近くのビルで買い物をすることになった。
休日ということもあって、多くのカップルや家族でいっぱいだ。
「・・・さて、何にしようか?」
「こんだけ店がたくさんあると、何買えばいいか迷うな・・・」
「そうだね。どれもいいなぁって思うけど・・・。
前におばさんがこれほしいとか言ってたの、聞いたことないの?」
「・・・ねぇな。」
「そっか・・・。あ、なら趣味とかないの?」
「趣味・・・・。あ!よく料理はしてるな。最近はお菓子教室とかなんかに通ってるみたいだしな」
「じゃあ、キッチン雑貨にでもしようか」
「そうだな」
キッチン雑貨を買うためにそういったものを取り扱ってるかわいらしい店に入り、かわいらしい鍋のセットと、私の気持ちとしておばさんが好きな色の手ぬぐいを一緒に包んでもらって、クロは満足そうにそれを受け取った。
時間はちょうどお昼を過ぎたころ。
朝ごはんを食べていない私のお腹はギュルギュルと音を立てた。
「・・・なんだ、榎月。腹減ってんのか?」
「あ、うん…。朝ごはん食べてきてないから」
「…まぁ、俺も腹減ったし。
昼、食ってから帰るか?」
「うん」
昼のピークも過ぎたため、入った店はそんなに混んではなく、すぐに席につくことができた。
人気メニューをお互いに頼み、ドリンクもついでに頼んだ。
「こうやってクロと外食なんて高校の卒業祝い以来だね」
「そういわれれば、そうだな」
「あの時は研磨もいたね」
「あぁ」
「そういえば、研磨は?連絡とってるの?」
「うん。あいつは心配だからな」
「あはは、クロは心配性だね」
そのあとは大学での他愛もない話。
この授業はどうだとか、
新しくできた友達はこんな人で、
大学にお気に入りの場所があって・・・
そんな話を2時間近くしていた。
気が付けば回りのお客さんは後から入ってきた人たちばかりだと気が付いて、店を出ることにした。
お会計は付き合ってくれたお礼ということで、クロが全部払ってくれた。
店を出て駅までの道を二人でゆっくり歩く。
大学が違ければ、住んでるところも違うので、駅につけば違う電車になる。
多分しばらく会うこともないだろうから、もう少し一緒にいたいと思う。
「・・・そういえば、お前彼氏とかいないのか?」
急にクロがそんな話を振ってきたので、私は目を丸くした。
「どうしたの、急に」
「いや、新しい生活になって彼氏の一人や二人はできたんだろーなと思って。」
「なにそれ。てか、生まれてから彼氏ができたことないっていうの、クロ知ってるでしょ」
「まぁ・・・」
「そういうクロは?高校の頃はいたでしょ?」
「いまはいない」
「あっそう。
・・・気になる子とかはいないの?」
「そうだな・・・」
クロは考え始めた。
別にクロの容姿ならば、いろんな女の子が寄って来るから選り取り見取りなんだろうけど。
ていうか、彼氏がいたことがない私に聞くなんてどうかしてると思う。
と、思ってるとクロは立ち止った。
そして、後ろにいる私の顔を見て
「・・・・お前だな。
榎月」
そういわれた。
「・・・・・・・は?」
思わずそんな声を出してしまった。
「何それ、え、・・・恋愛対象で、ってこと?」
「あぁ・・・」
「嘘だ。冗談に決まってる。」
「嘘じゃねーよ。
・・・第一、今日お前んちに行ったのは会いたかったからだし、
そしたら、母さんの誕生日がもうすぐだから、それを一緒に選ぶってことだったら出かけられると思って・・・・・・」
最後の方の言葉はまるで消えそうだった。
しかも、今までにないくらい顔を赤くして。
私は反応に困ってしまった。
え、こういう時どうすればいいの。
恋愛経験が極端に少ない私にはもうどう対処したらいいのか分からなかった。
耐えかねたのか、クロの方から話始める。
「・・・昔から榎月のことは気になってた。
だけど、幼馴染って関係を壊したくなかったし、お前が困ると思った・・・
だから、ずっと黙ってたし、いつか気持ちが変わるかもしんねぇと思って無理矢理彼女を作ったりもしてた。
だけど、大学に進学して、離れ離れになって、常にそばにいたお前がいないことに寂しさを覚えちまって、それで・・・
あ〜〜〜〜〜〜〜〜!!もう!!」
そういうと、クロは急に肩をつかんで来て
「とにかく!俺は榎月が好きなんだよ!
いいな?!分かったな?!」
そういって、クロは足早に駅へといってしまった。
私はペタッと地面に座り込んだ。
「なに、それ・・・・」
いきなりの告白に、しばし私は立ち上がることができなかった。
無計画な休日ほど、怖いものはないと思った日はこの日以外なかった。
〜次の週の休日〜
ピンポーン
(・・・クロ?)
(あぁ・・・)
(今日は、どんな御用で・・・)
(・・・・・デートしないか?)