文【P】

□繋ぐ赤
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散歩には心地の良い、少し秋の匂いがする夜のことだった。

私は長い眠りから目覚めて数日が経っていて、今日も退屈な夜を散歩してしていた。

「…甘い香り?」

何の匂いなのか何となくわかっていたが、まさかと思いつつ匂いの元を探して羽ばたいていると木の生い茂る人の気がない林に辿り着いて。
よく見れば、そこには人が一人不自然に倒れているではないか、近付けば匂いの元が何なのか確信した。

「…これは酷いな、何かに襲われたのだろうか?」

無惨にも酷く傷付いて、血塗れになった人間がうつ伏せで倒れていた。

私はヴァンパイアで血の匂いには敏感である、吸血は好まないのだが。
然しヴァンパイアは所詮ヴァンパイアでしかなく、多少吸血しなくとも生きては行けるが、吸血をしなければ力が出ないし、全く吸わずにいれば気が狂ってしまうといわれている。

香りだけで何となく血の味は検討がつく、コイツは美味いに違いない。

「……少しだけ…」

まだ息はある様だ、背中が忙しなく上下している。

早く医者に診せなければならないのに、目が覚めてからまだ一度も血を口にしていなかったせいか、申し訳ない気持ちもあったが堪えきれず、舌なめずりして貪る様に
コイツの手に付着している半乾きの血を舐めてしまった。



「……ン…」

思った通りコイツの血は濃厚で甘く、それでいて後味がすっきりしていて少しクセがあるが美味だった。
正直言ってこれ程までに美味い血を口にしたのは初めてで正直驚いた位だ。

久々に血を口にすると、全身に染み渡る様に力が漲って身震いする。

「はぁ…」

吐息を吐き夢中で血を舐めていると、コイツは気がついたのかピクリと身体を揺らして顔を横にずらした。

「…天使?悪魔かな?ヒッヒッヒ…」

重たそうに瞼を押し上げると赤い瞳で私を見据えた、大怪我をしているにも関わらず悠長に笑っている。
肌は青く、普通の人間ではないと一目で悟った。
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