文【P】
□絡んだ、糸
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忘れもしない、あの日の出会いから君をずっと意識しているから。
「…ったく、何処に行ったのだ…まぁいい、取り敢えずこの城内にはもう一人同居人がいるのだが会ったら宜しく頼む、話はしてあるから」
「はい、わかりましたっス!」
オレは田舎から出て来て、本当はコックを目指す予定だった。
右も左もわからない知らない土地で、仕事を探して情報誌を片手にうろうろしていたら、このユーリって人が仕事をくれるって言ってくれて、条件も給与も思ってた以上に良かったから繋ぎにと雇って貰うことにした。
住み込みで拘束時間は特になく、気が付いた時に城内の掃除や家事、毎食の食事を作ってくれとのことだ。
「では、早速で悪いが私は少々出掛けてくる…適当にやっててくれ」
「了解っス、気を付けていってらっしゃい」
だけど、こんなデカい城だったなんて驚いた、何処から手を付ければいいんだろう。
でも、ユーリは悪い人じゃなさそうだし、同性だとは思えない位綺麗で、寧ろその辺の異性よりも綺麗で驚いた…きっとお金持ちの凄い人なんだと思う、多分。
それともヴァンパイアってみんなこうなのか?
出掛けると言うユーリを見送って、取り敢え
ず用意してもらった自室に荷物を置きに行くことにした。
「…わぁー、いい部屋っスね〜」
長い間使っていないのか埃っぽいが、1人用にしては広くて家具も一式揃っている立派な部屋だった。
「……何か、条件が良すぎて逆に怖くなって来たっス」
仕事内容が家政婦並みで、こんなに条件がいいなんて聞いたこともないし、少し不安になった。
「…わッ!!?」
1人で悶々と考えていると、いきなり何かに耳を触られた感覚がして、飛び退いて声を上げて驚いた。
「なっ…何スか!?今、何かに触られ…っひ!?」
まただ!腕に触られた!
絶対に何かいるって確信する。
「…まさか、いわく付きってヤツっスか!?」
内心ヒヤッとしながら辺りを警戒しながら感覚を研ぎ澄ます。
けど、嫌な感じはしなくて微かに甘い香りがして熱を感じる、恐る恐るそこに思い切って手を伸ばして掴んでみた。
「…ヒッヒッヒ!流石、狼男だネ…もうボクに気づいちゃったのかい?」
「…ッ!?く、口…っ?!」
口だけが宙に浮いていて、慌てて手を離して間合いを取ると、その何かは徐々に姿を現す。