文【P】
□痛いの痛いの飛んでいけ
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痛いの痛いの飛んでいけって凄い魔法なんだ
だって本当に痛くなくなるんだもん
…目に見える傷はね
「…そんな汚い手で触らないでッ!!」
「ゴメンナサイっ、お母さん!…痛いッ!!」
「…スマっ!?母さん、やめて!ね?!ボクと買い物に行こう?!」
いつもこう、お母さんはボクが嫌いなんだ。
お兄みたいにイイコじゃないから。
「そうね…好きな物買ってあげるわ」
「アリガト、母さん…」
お兄とお母さんが出て行くとボクは独りでお留守番、お母さんがボクに投げて割れた食器を片付ける。
もうお母さんには何の感情も抱かないからいいんだけど。
今のお母さんは人間の義母、実母はお父さんと別れて行方知れず。
お父さんは僕らを連れてお母さんと再婚したけど、いつの間にかお父さんも蒸発した。
そんな境遇に、お母さんは気が触れてしまったんだってボクなりに理解してるつもり。
片付けを済ましたら洗面所に行って鏡で傷を確認するのが日課、頬から唇にかけて腫れて痣が出来てた、唇は切れて血が出てる。
一つ傷を見ると身体中の傷が気になって、包帯を取って前の傷も見てみた。
お母さんの言うとおり
、鏡に映るボクは確かに醜かった。
殴られたり、熱湯を掛けられたり、火を押し当てられたり、包丁で刺されたり色んな傷が沢山ある。
お兄がかばってくれるからこの程度で済むけど、そうじゃなかったら今頃ボクはどうなっているだろう?
「ヒッヒッ…死んでるカモ」
死んだら痛いのもなくなるのかな、みんな丸く収まるのかなって考える様になってから、死ぬのは怖くないしいつ死んでもいいって思う様になってた。
「ただいま、スマ!」
「おかえりなさい」
洗っておいた綺麗な包帯を自室のベッドに座って身体に巻き直してたら、お兄が帰って来た。
「スマにおみやげだよ?あーん、して?」
口を開けて放り込まれたのはキャンディだった。
「このアメはね"痛いの痛いの飛んでけアメ"なんだヨ?」
「…どういうアメ?」
味はイチゴだけど、聞いたことのないアメの種類で首を傾げて。
「このアメを舐めると、痛みを感じなくなるの!凄いデショ?!」
「すごいネ!どこに売ってるの?」
聞いたところでボクは外に出られないけど、そんな物が売ってるなんて気になったから尋ねてみた。