文【P】
□ガラクタ連鎖反応
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不完全な肉体に健全な精神を携えて歪にも美しいのに
完全に壊れることも許されずこんなに苦しんでいる
…悲痛な叫びの一つも上げることすらせずに
どうして微笑んでいられるだろう?
「っ!?…ッすまない!!」
「…ッ!ボクこそゴメンネ?!っケガしてナイ!?」
芳しく綺麗に咲いた赤い薔薇が宙を舞った。
中庭でスマイルが摘んで来たのだろう、城の廊下の角でぶつかって。
転んだスマイルに薔薇は降り注ぐ様に落ちて、棘が頬を掠め傷付き血が出ているのに気付いていないのか、ユーリを心配し慌てる。
「私は平気だが、お前が…っ」
「よかったァ…」
ユーリの無事を嬉しそうに微笑むが、スマイルの傷にユーリは血相を変えてしゃがむと持っていたハンカチを傷口にあてた。
「…?ボクならダイジョブ、それよりハンカチ汚れちゃうから…っ」
「そんなことは気にしなくてもいい!…他は?何ともないか?!」
スマイルは痛みを感じない為、怪我をしていても平然としているせいかユーリも気が気ではない。
「…っダイジョブだヨ、大袈裟だなァ〜」
「大袈裟でいい、何かあってからでは遅いのだから…」
手を伸ばして腕を掴み立たせると不安げに身体中を触ったり関節を曲げてみたりして確認するユーリに、スマイルは苦笑してその場で一回転し何事もないと証明して見せた。
「手の平も傷だらけではないか!まさか、素手で摘んだのか!?」
「ヒッヒッヒ、でも何ともナイから」
チラリと見えた手の平は傷だらけで、まさかと思ったもののやはり素手で棘を掴んでいて。
「馬鹿者!痛みがないとはいえ、こうして傷つきはするのだぞ!?少しは身体を労らぬか!!」
「…ゴメンナサイ……でもホントに心配しないで?演奏には支障ないから」
傷付いた手の平を悲しそうに見つめてから顔を見て叱咤するユーリに、スマイルは申し訳無さそうに苦笑してから屈んで散らばった薔薇を拾おうとする。
「止めろ!私が拾う…」
「…ダメっ!ユーリがケガしちゃうから!!」
スマイルを退けて自ら薔薇を拾い始めるユーリに、スマイルは焦って声を上げた。
「痛みが無ければ傷ついてもいいとでも思っているのか?私が傷つくのをお前が嫌がる様に、私もお前が傷つくのが嫌なのだ…演奏に関係なくだ、わからぬのか?」
「……ボクは…っ」