ぬら孫
□愛しの君へ。
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今日は奴良組にとって、めでたい日。
「若菜さま!」
「ん、なぁに?」
「お誕生日おめでとうございます!!」
そう、今日は奴良組二代目の奥方である若菜の誕生日なのだ。
「まぁ、ありがとう!」
「私、今日は若菜さまのためにはりきってご馳走をつくりますね!」
「ありがとう、雪女ちゃん。」
「若菜さま、私からもっ!」
「若菜さま!!」
このように、今日の主役は大人気な訳で。
鯉伴は曹司の前の縁側に腰掛けてその様子をみていた。
それも、とても不機嫌な様子で。
鯉伴が不機嫌な理由は、今日一番におめでとうと言えなかったことと、部下たちが若菜を独占していること。
どれも、子供みたいな理由だが鯉伴が不機嫌になるには、十分すぎるようだ。
痺れをきらした鯉伴が立ち上がると同時に、鴉天狗がやってきた。
「二代目!傘下のものが大規模な争いを始めました。仲介に向かうゆえ、大至急出入りの準備を!!」
そう伝えられたと同時に、周りの空気が一変する。
「おいおい、今からかよ?」
「はい、結構遠い位置にあり、名高い組の者同士の争いでありまして、他の傘下の者では止められないと。」
周りの部下たちは次々に出入りの準備へ取り掛かっていた。
「若菜、ごめんな。すぐ戻るから。」
「いえ、お気をつけて行ってらっしゃいませ。」
「あぁ…ほら、てめーら行くぞ!」
鯉伴が率いる百鬼夜行は朝の空に消えていった。
「…さて、どうしましょ。」
一人残された若菜は、急に暇になってしまった。
「家事でもしようかしら。」
そうして、いつもと同じように家事にとりかかった。