ぬら孫
□鯉しくて
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清々しい澄みきった空の下。
若菜は、奴良家の庭で鯉伴の羽織りのほつれたところを縫っていた。
「…よし、できた!」
今も家事はあまり得意ではないが、大部スムーズにできるようになり満足していた。
「若菜。」
後ろから手を回され、少し顔を上げると今縫ったこの羽織りを羽織る本人、鯉伴がいた。
「鯉伴さん!」
「何してたんだ?」
「羽織りがほつれてたから、縫い直してたの、ほら。」
そう言って嬉しそうに羽織りを見せる若菜。
しっかり直してある羽織りを見ると同時に、その傷だらけの指も一緒に見えた。
「若菜……ありがとな。」
「いえいえ、どういたしまして。」
一生懸命やってくれた若菜の嬉しさに、鯉伴の心は暖かくなった。