ぬら孫

□雪の冷たさと君の温かさ
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日も沈んできた夕暮れ。


東京にめずらしく降った雪。

鯉伴は部屋からその雪を眺めていた。


庭では、小妖怪たちと雪女が遊んでいる。
ほかの妖怪たちは、炉にあたっているようだ。


「二代目。」

襖のほうに顔をむけると、首無が立っていた。


「たまには、一杯どうですか?」



ああと、返事をし部屋に入れた。






「しっかし、寒いな。」

「珍しく雪も降っていますしね。」

酒を一口飲むと体が温かくなった。




「それと二代目、若菜様がこれをと。」


首無が差し出したのは、打ち掛けと羽織りだった。


羽織りはほつれていたところが縫い直されていた。 


酒の温かさとはちがう、若菜の温かさが心に広がった。



「首無。」

「はい。」


「俺は、若菜を幸せにできると思うか?」

首無が驚いて顔をあげると鯉伴は羽織りを眺めていた。


「若菜にはこれから、数え切れないほどの危険が伴うし、まだ山吹のことも・・・」


酒が入っているのか、柄にもなく弱音を吐く鯉伴。

「二代目・・・」


二代目の不安はやはり・・・




首無は廊下に響く幸せそうな笑い声を聞いた。


「若菜様なら・・・大丈夫です。」

「え?」

「ほら。」


そして、襖に視線をうつした。




「鯉伴さん!!」



バンッと勢いよく開いた襖には頬や鼻を赤くした若菜が立っていた。


「あのね!みんなで雪だるま作ったの!見てみて!」


そう言って鯉伴の手をとる若菜の手は、先程まで雪で遊んでいたからか、冷たかった。


「あ、首無くんもきて!」


楽しそうな若菜をみてさっき首無が大丈夫と言った理由がわかった気がする。



「みんなー鯉伴さんたち連れてきたわよー!」

みんなに報告する若菜。

誰がみても幸せそうな笑顔だった。




「二代目、若菜様なら大丈夫です。」

「ああ、そうだな。」


酒が回ると余計なことを考えるから、いけねぇーなと笑い、若菜のもとに向かった。




うれしそうに、鯉伴の手を引く若菜をみたら分かる。

若菜なら、大丈夫、わかってくれる。


俺に一生ついてきてくれる。


そう確信した。






「若菜。」

「はい。」


「絶対幸せにするからな。」


「・・・はい!」




今はまだ話せないが、いつか俺の過去を話すときは、俺を信じてくれ。


「鯉伴さん!」






雪の降る中、若菜と繋いだ手はもう冷たくなかった。





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