ぬら孫

□迷子
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たくさんの人がガヤガヤと通り過ぎていく中。

普段の着物とは違い、ワンピースにカーデを羽織った若菜は一人その場に立ち尽くしていた。




(ど、どうしよ・・・)



それもそのはず。
ここは若菜の住んでいる町とはまったく違う所だからだ。


なぜ、彼女がここにいるのかと言うと、半刻前に遡る。





最近、鯉伴は夜遅くまで出入りがあり、帰ってくるなり夕方まで寝てしまうという生活が続いている。



若菜は、大変だからしょうがないと我慢していたものの、さすがに二週間も続くと我慢の限界がきた。

「鯉伴さん、私行きたいところがあるんですけど・・・」

「わりぃ、行けそうにねぇわ。」


勇気を出して言った誘いも、欠伸一つで返されてしまった。

そうして、若菜は一人で出かけることにしたのだ。
しかし、あまり遠出をしたことがない若菜は案の定、道に迷ってしまったというわけだ。




(・・・前から約束してたのに。)

本当は今日、鯉伴と共に出掛けるはずだった。
けれど、二週間前のことも連日の出入りの疲れで忘れてしまったのだろう。 
 

(この服、鯉伴さんに見せたかったな。)

これじゃ、せっかく買った服も台無しだ。


「それよりも、今どこかしら?」


見渡しても、人と背の高いビルばかり。

人に聞こうにも、みんな忙しそうで足を止めてくれない。

若菜は完全に迷子になってしまった。



「鯉伴さん・・・」



若菜の心は不安と心細さでいっぱいで、今にも泣き出しそうだった。



歩いても歩いても、まったく知らない場所。


誰も見向きもしないで通り過ぎていく。





まるで・・・




“地球上に独りぼっちになったみたいに”






そう思うと急に怖くなり、近くの公園に駆け込んだ。


(独りぼっちはやだ・・・さみしい)

辺りも次第に暗くなり、肌寒くなってきた。


タッタッ・・・


「!!」

その時、一つの足音が近づいてきた。


タッタッー・・・


次第に近づく足音。

(悪い妖怪だったらどうしよ。)



タッタッー・・


(嫌だ、怖い!!)


「鯉伴さん!!」


「若菜っ!!!」



えっ・・・・・・?





 
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