ぬら孫
□愛しの君へ。
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「…遅いわね。」
時計は、もう夜中の11時を回った。
幾ら遠くたって、帰りが遅すぎる。
夜になって冬の冷たい風が屋敷を吹き抜ける。
「あぁ…、今日ぐらいは一緒に居たかったな。」
ついつい本音がでてしまった。
若菜もこうみえて、年頃の娘だ。
誕生日ぐらい、好きな人と一緒に居たいという願望くらいある。
若菜の場合はその願望をあまり表にださないだけで。
「鯉伴さん、大丈夫かな…。」
妖怪任侠一家の主である鯉伴はつねに、命の危険と隣り合わせだ。
若菜の胸に、最悪の事態という考えが浮かんだ。
そんなことは無いと、信じようとしても、一度浮かんだらなかなか消えてくれない。
「…鯉伴さん、早く帰ってきて。」
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「…っまだかよ!」
「二代目、危ないですから暴れないでください!」
その頃、鯉伴たちは大急ぎで屋敷に向かっていた。
仲介に手間取ってしまい、帰りが遅くなってしまった。
そして鯉伴は、終始、目に見えて分かるほどの怒りに満ちた畏を纏っていた。
最初は、ただ止めるだけだったはずなのだが、早く若菜の元に帰りたい鯉伴が我慢できるわけがなく…
「あ゛あ、めんどくせぇ!!」
と、争いに参加してしまい武力で半ば無理矢理解決してしまった。
「おい、もっと速く飛べねぇのか!?」
「も、もう少しでつきますから!!」
早く、早くいかねぇと終っちまう。
間に合え…。
――――若菜。