捧げ物1

□太陽のような君
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※里乃さまのみお持ち帰り可



思い返せば、君がいた。


みんなの笑顔の中心に、いつも君がいた。



鯉伴は、部屋で一人考えていた。

「最近奴良組は明るくなった。」

たくさんの妖怪たちが皆、口を揃えてそう言う。



その理由は、ただ一つ。


あの少女が奴良組に来たからだ。


少女は、鯉伴の深く沈んだ心を癒し、奴良組に笑顔を与えたのだ。


誰もできなかったことを、いとも簡単にやってのけた。


「若菜はすげぇな…。」


そう思っていると、タタタ…と軽快な足音が聞こえた。


バンッと勢いよく襖が開く。

「鯉伴さん!」

襖から顔を出したのは、先程から鯉伴が考えている少女だった。

「若菜、どうした?」

「これ、見てください!」


若菜に手を引かれ庭に出ると
空が赤色に染まっていた。


「綺麗でしょ?」

そう言って指をさした先には真っ赤な太陽があった。

その真っ赤な夕日に照らされ、家も木も人も赤く染まっている。


「太陽って皆を照らすだけじゃなくて同じ色に染めちゃうこともするのね。」


若菜の笑顔も赤く染まっている。

鯉伴はさっき考えていたことを思い出した。


若菜は…


皆の笑顔の中心にいる。

れはつまり、みんなを笑顔にしているということ。

鯉伴の心を変えた。
深い影が差していた自分の心を明るく照らしてくれた。


ふっと気がつくと若菜を抱きしめていた。

「鯉伴さん?」

「若菜、お前はまるで太陽みたいだな。」

「太陽…?」


「あぁ、奴良組の太陽だ。」


奴良組を照らしてくれる、太陽。

そして、自分を照らしてくれた太陽。


「若菜。」

「はい。」


「…ありがとう。」

「鯉伴さん?」


感謝の気持ちでいっぱいだった。

それが伝わるようにぎゅっと抱きしめた。


「鯉伴さん、顔赤い。」

「若菜も赤いぞ。」


「同じ色ですね、私たち。」

「あぁ、そうだな。」



そうして暫く二人で、沈み行く夕日を眺めていた。






笑顔といって、思い出すのは

いつだって君だった。

太陽のような君。
 
 
 
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