ぬら孫
□夕日に誓って
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最近、鯉伴がいない時若菜は黒羽丸と一緒にいることが多くなった。
まだ、大きな仕事についていなかった三羽烏が暇つぶしがてら、若菜に構っていたのがきっかけである。
真面目な黒羽丸は、夕方もパトロールをしていて、よく若菜の下校時間と一緒になった。
そのせいか黒羽丸とは、三羽烏のなかで特に仲が良かった。
「でね、今日学校でクッキー作ったの。」
「へぇ。」
それは、ちょっと形崩れしたココアクッキーだった。
「食べてみて?」
「え、俺が…?」
「うん!!」
そう言われ、若菜のクッキーを一枚くちにした。
「うまい…。」
「ほんと!?」
「あぁ、きっと二代目も喜ぶよ。」
「鯉伴さんにはね、別のクッキーをあげるの。
だから、これは黒羽丸くんのぶん。」
「え…。」
「黒羽丸くん、いつも暗くなったらさりげなく送ってくれるでしょ?それにお仕事忙しいのに、いつもこうやって私の相手してくれるし……感謝の気持ち!」
「こちらこそ…か、感謝する…。」
「へへ、どういたしまして!」
若菜は黒羽丸に満面の笑みを見せた
。
黒羽丸は若菜に好意を抱いている。
それは決して実らない小さな小さな恋。
「あ、鯉伴さん!!」
若菜がたたたっと走っていった先には、今帰ってきたばかりの二代目がいた。
「若菜、来てたのか。」
「うん、黒羽丸くんが話し相手になってくれたの。」
鯉伴にいつもすまないなと言われた黒羽丸は、一礼し素早くその場を離れた。
大事にクッキーを抱えて。