ぬら孫
□迷子
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顔を上げると、一番会いたかった人がそこにいた。
「鯉伴さん・・・」
「大丈夫か!?どこも怪我してないか!?」
ぎゅっと、鯉伴に抱きつく若菜。
それと同時にわっと泣き出した。
「おいおい、泣くなよ。」
「怖かった、怖かったよ〜」
鯉伴は子供をあやすように、若菜を抱きしめた。
「俺だって怖かったさ、目覚めたら若菜いねぇし、いつまでたっても帰ってこねぇし。」
「だって・・・、鯉伴さんが今日出掛ける約束してたのに忘れちゃうし、最近出入りばっかりですぐ寝ちゃうし・・・」
「うっ」
「私、寂しくて・・・。」
「すまねぇ・・・」
「ぐすっ・・・でも、いいです。鯉伴さん、こうやってむかえにきてくれましたから。」
「若菜。」
「私を見つけてくれました。」
泣いて真っ赤になった目で微笑んだら、鯉伴さんが瞼にキスをしてくれた。
「もう、一人にはさせないから。」
「はい。」
怖いと思って、目を閉じて、鯉伴さんに助けを求めた。
そして、目を開けたらその人が目の前にいた。
ここ、家からかなり離れてるはずなのに。
汗もかいて、息切れもしてるから、相当走ったのだろう。
見つけてくれた。
それだけがとてもうれしかった。
「鯉伴さんは私がここにいること分かったんですか?」
「そこらへん歩いてた奴に聞いたんだよ、そしたら白いワンピースきた高校生くらいの女の子があっちのほうに歩いて行ったって言うから。」
「高校生じゃないけど・・・。」
「まぁまぁ、若菜こそ、どうやってここまできたんだ?」
「タクシーです、でも途中で渋滞しちゃって、降ろしてもらったら、ここに・・・」
「まったく、危なっかしいな。」
「ごめんなさい・・・でも、また迷子になっても大丈夫な気がします。」
「どうして?」
「鯉伴さんが見つけてくれくれます。」
そう言うと、ぐいっと抱き寄せられた。
「そうだな、どこにいても俺がみつけてやる。」
「えへへ、お願いします。」
鯉伴さんの胸に顔をうずめると耳元で
それと・・・
と、囁かれた。
「その服似合ってるぜ。」
この服も無駄じゃなった。
いる場所、いってほしかった言葉。
全て、鯉伴さんにはわかるみたい。
「それじゃ、若菜。明日出掛けるか。」
「え、出入りは?」
「最近頻繁にあったからな、しばらくはいいだろ。」
「やったー!!ありがとう、鯉伴さん!」
「どういたしまして、お姫様。」
帰り道はもう、独りぼっちではなかった。
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