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□花の中で
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季節はもうすっかり冬から春に変わって、町は春の陽気に包まれた。


ある桜の花が咲き誇る木の
下。

そこには、色とりどりの花が咲く花畑がある。



「綺麗ですねー。」

「だろ。」



その花畑に仲睦まじく並ぶ二つの影。


奴良鯉伴とその妻、奴良若菜だ。



この花畑は鯉伴がいつものように散歩をしていたところ、偶然見つけて

若菜に見せたいと今日、つれてきたのだ。

奴良組のみんなにこの花を見てみたいと若菜はたくさんの花を摘んでいる。






「鯉伴さんはなに作ってるの?」

「ん、花の冠・・・っとできた。」  


そして、若菜の頭にそっとのせた。




「やっぱ、かわいい。」



若菜の額に優しく口づけを落とすと、肩に寄りかかってきた。

「眠いんですか?」

「んー・・・・・・若菜、膝枕して。」

「いいですよ。」




膝に頭をのせた鯉伴はすぐに気持ちよさそうに目をとじた。

鯉伴のきれいな黒髪をなでた。


「・・・幸せだな。」

「私もです。」





ふわ――・・・






その時、風がふいた。

「わっ!!」




風がふくと同時に花畑の花や桜の花びらが舞い上がった。




「綺麗・・・」


「・・・。」




一枚の花びらが若菜の髪についた。

鯉伴はそれをとろうと手を伸ばした。




しかし、その手は途中で止まった。





舞い散る花びらの中、その花びらを見つめる若菜がいつものかわいい感じとは違い、とても儚く、美しく見えたからだ。






「鯉伴さん?」


「・・・若菜」


途中で止まった手を頭に添えて、そっと引き寄せた。



優しく口づけをした。



「ーーっ鯉伴///」

「おっ照れてんのかい。」
 

「あ、当たり前です!!//」

「ま、一緒に昼寝でもしようか。」


今度は起き上がり、若菜と鯉伴が桜の木の下で肩をならべた。

「お昼寝から起きたら、夕飯の買い物して帰りましょう。」

「あぁ。」






「「おやすみ。」」





桜が咲く花畑で、仲良く眠る二人の姿はとても幸せそうだった。


そして、若菜の頭にのっている、花の冠が春の柔らかな日差しがあたり、キラキラ輝いていた。


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