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□手編みマフラー
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「此処か…」


天馬が住んでいるというアパートに着く。
彼はどの部屋に住んでいるのだろうか。


「あら?何か用かしら?」


突然、扉が開き中から女の人が出てきた。


「あ…、どうも…天馬……くんはどちらに??」

「貴方が剣城くんね!!」

「はい…………は?」

「信助くんから連絡が来たの。天馬は休みだって言おうとしたんだけど聞かないまま出て行っちゃって、多分剣城くんは此方に向かっているからって」

「あの…一体何が…」

「天馬は此方よ」


呼ばれるままに、女の人の後をついて行く。
彼女がよく話題に出る「秋姉」なのか。

天馬の部屋の前に着くと、秋姉…らしき人から鍵を貰った。「これで中に入って」と。


「お邪魔します…」


勝手ながら中に入ると、室内はシン…としていた。
少し歩くと、そこには丁寧に敷かれた布団の中で横になり可愛い寝息をたてている天馬が居た。


「天馬……」

「ん……つる、ぎ…」


軽く名前を呼んだだけなのに、目を覚ます天馬。
俺を見るや否や、「えへへ…」なんて笑って見せた。


「馬鹿野郎!何故学校に来なかった!!」

「実はね…最近寒いから剣城に……これ、作ってたの」


そう言って渡された紙袋の中には、手編みのマフラーが入っていた。


「昨日作り始めて、ゆっくり編めば良かったんだけどね…早く渡したかったんだ。そしたら徹夜しちゃって、案の定身体がもたなくて倒れちゃった…」

「お前……」

「学校行くって言ったんだけど、秋姉がダメって……これぐらいで倒れるなんて、ダメだよね…俺…」

「天馬……!」


ギュッ


「剣城……??苦しいよ?」

「煩い、煩い!!」


口では暴言しか言えないけど、俺を思ってくれた天馬が凄く嬉しかった。
煩いしか言わない俺を天馬は抱き返してくれた。



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