□インターホン
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インターホン
部屋に響いたインターホンに長次は目を覚ました。
ヘッドボードの時計に目をやると、昼を少し過ぎたころであった。
原稿の締切が近いにもかかわらず、習慣で本を開いてしまい、眠ったのが空が白やんで来た頃だった。
大学進学とともに引っ越してきた8帖程の部屋は作家となった今では作り付けの本棚と資料の山、体に合わせた大きなベッドに占領され、思いの外狭く感じる。
部屋の角にはL字のパソコンデスクが置かれ、広い天板の上は広げられたままの資料がそのままのになっている。
遮光性カーテンの隙間から春の暖かな日差しが射し込んでいた。
長次はベッドから降りると、部屋を出て玄関へと急いだ。
居留守を使ってもよかったのだが、インターホンが鳴った瞬間、不思議と目が覚め頭がスッキリしている。
玄関を開けると中学生くらいだろうか、セミロングの黒髪の少女が立っていた。
驚いている様子で、じっと長次の顔を眺め入っていた。しばらくすると要件を思い出したよだ。
「あっ、あの・・・隣の引っ越して来た福富カメ子です・・・」
挨拶品を手渡すカメ子は、また長次の重視している。
このマンションはすべて同じ1LDKの間取りで、殆どの住人が一人住まいである。
(家族で住むには狭くはないだろうか)
「一人で住むのか?」
「はい! 高校が家から遠いので・・・」
カメ子は顔を赤らめうつ向いてしまった。