After sweethearts

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 皆川が要求してきたのは、高階の自由を奪うことだった。
 俯せになって両手を背中に回して、と「命令」され、仕方なくそれに従うと両手首をひとまとめに括られる。

 なにすんだ、とうろたえる高階の抗議の声も届かない。背後なので見えないが、たぶん皆川のネクタイで縛られている。それから正面を向かされ、ベッドに寄りかからされた。
 アンダーウェアごとハーフパンツを脱がされる。
 
「や ───……やめろよっ」
「ダメ。俺の機嫌、直してくれるんでしょ」
「こんなんで直んのかよ!?」

「直るよ。……超エロい眺め」
 上にTシャツ一枚身に着けただけの高階に、皆川は蕩けそうな目付きを向ける。
 超とか言うな、エロくもないしっ、と真っ赤になった高階は膝を折りたたんで胸に付ける。下半身を隠そうとしての仕草だったが、皆川は無情にも、膝立てたまま脚開いて、と言い放った。

「……な……な……っそんな恥ずかしいカッコ出来るか!」
「イヤなの?」
「イヤに決まってんだろ、バカ、手ェ解けっ」

 高階の返答を聞くと、皆川は揃えられた膝に無言で手をかけた。
 何をされるか悟って、高階の身体がすくむ。
「やっ……やあっ、やめろ、皆川、やだっ……」
「……なんか、あんたのこと、レイプしてるみたい……すごい興奮する」

「ヘンタイ、バカ、バカ、バカ、バカっ……」
 拙い罵りの言葉くらいでは皆川は膝にかける手の力を緩めてはくれない。抵抗しようにも高階の両手は後ろ手に縛られていて、自由にならない。
 
 力ずくで膝をこじ開けられた。高階は顔を背けて見ないようにする。耳まで熱かった。
 内腿を皆川の手に押さえつけられていて、閉じることが出来ない。
「……すげーエロい」
 上擦った皆川の声がしたかと思うと、脚の間にある反応していなかったものが温かくぬるりと包み込まれる。
 
 驚いて目を向けると、立てた膝の間に皆川の頭があった。
「やあ、やだ、やだ、やめ……っ」
 皆川の唇と舌の丹念な動きに快楽が押し寄せる。ちゅくちゅくとどうしようもなく淫らな音が響き、脚を押さえつけていた皆川の手が徐々に中心部に向かっていく。

 流れてきていた唾液を長い指ですくった皆川は、それをすぼまりに塗り付け、さらにその指を奥に侵入させる。
 びく、と高階の身体は意識せず強張った。
 唇を噛んで精一杯声を上げないようにする。

「ん……っ……あっ……ん、ん……っ」
 それでも漏れてしまう自分の声に、涙が滲む。高まりを舐られながら体内で皆川の指が蠢く感覚に、高階は敏感に反応してしまう。
 顔を上げた皆川が満足そうな笑みを浮かべる頃には、膝を閉じる気力も失くしていた。
 
「……手、背中で縛られて、膝立てて開いて、ココ、こんなになってる。後ろもぐちゃぐちゃだし……カオ、真っ赤で泣きそう、……写メ、撮っちゃおうかな」
「バカ……やめろ……そんなことする奴、恋人じゃない、……他に男作る……」

 嘘だった。皆川が自分の想いに応えてくれている、というだけで奇跡だ。たとえ本当に写真を撮られたとしても、他の男なんかいらない。
 高階の気持ちを知ってか知らずか、皆川は宥めるような猫なで声を出した。
 
「……じゃ、写メやめた。その代わり、イかせて下さいって言ってよ」
「……イヤ、だ」
 ぷい、と高階は横を向く。写真を撮られるのも嫌だがそんな恥ずかしいことだって到底言えない。頑なに、再び膝を閉じて胸に付けた。

 その様子をじっと見ていた皆川は要求をエスカレートさせる。
「……自分から脚開いて、イかせて下さいって言って?」
「い、イヤだっつってんだろ! そんなこと誰が」

 軽く笑みを浮かべていた皆川の表情が、アパートに訪れた時と同様、ほんのわずかだけ冷たくなる。
 出た、と高階は怯んだ。良くなりかけていた皆川の機嫌を損ねた。
 片方の足首を掴まれて強く引かれる。あっと思う間に横倒しになった高階の身体を、皆川は俯せにした。

 腰を上げさせられ、受け入れる体勢をとらされる。普段なら腕や手で支える自分の身体を、両方の手首を背中で縛られている今は肩や横向きになった顔で支えるしかない。
 フローリングの床はひやりと冷たくて硬い。肩は痛いし、腕もだるくなってきている。

 けれど、そんなことはお構いなしに皆川は両手で双丘を押し開いた。すでに解されていたそこは長い指をすんなりと受け入れる。
「あ……あっ……!」
 先ほどより増やされた指が高階を開かせていく。ある場所を探り当てられ、泣くような声を上げた。
 
「……や……こんなのやだ……っ……」
「……イヤだイヤだって、ずっとそればっかり」
 先端から雫を流す高階のものを、皆川は後ろから握りこむ。それを容赦なく大きな手で擦られ、中心部に埋められた指は高階の中をかき回す。

 悲鳴のような声を上げて高階は達してしまった。白いものが弾けて床を汚す。
 それを気にする余裕は高階にはなかった。皆川は高階の中のあの場所を、指でさらに刺激する。
「……もう、やだ、やだっ……」

「……ウソ、……俺の指、きゅうって締めつけてくるよ。……欲しがってる」
 羞恥からか、生理的なものなのか、涙が浮かんでくる。
 いつの間にか、みながわ、と泣き声で呼んでいた。
 
 ずるりと指が引き抜かれ、代わりに皆川の凶暴に猛ったものが押し当てられる。
「あ、あっ……!」
「……もっと、泣かせたかったんだけど、……やっぱり、ガマン出来ない」
 
 すべてを高階の中に収めた皆川はしばらくそのまま留まった。圧迫感はあったが、皆川の動きが止まったおかげで高階に少しだけ余裕が出来る。無理やり首を曲げて背後を見上げた。
 そこにはいつもの穏やかな表情の皆川はいなかった。何を考えているのか判らない目が高階を見下ろしている。
 端整な顔を歪ませて、皆川は囁いた。
 
「……どうしてあんなふうに笑うの?」
「なに、……なに言っ……」
「昼間、……楽しそうだった」

 その言葉で高階は、今、なぜこんな目に遭わされているのかを思い出す。
「あれは、……ちょっと、ふざけてた、だけっ……」
「俺より、仲イイよね。……加藤に気があるの?」
「ねえよっ……あるわけないだろ! 同じ部署だからっ……」
 
 皆川は動いていないのに、じりじりとした疼きが下腹部からせり上がってくる。じれったさに高階は身を捩った。
「皆川っ……みながわ……っ」

「……なに?」 
 どうして欲しいのか判っているはずなのに、皆川は留まったままだ。
 恥ずかしいことを自分の口から言わせようとしている、と気付いた高階は、ぎゅっと目を閉じた。

 首筋まで赤く染めて、動く分だけわずかに腰を動かす。自分を穿つ皆川のものをその場所に擦り付けた。
「あッ……あ……っあ……」

「うわ……それ、やば……」
 切羽詰まった皆川の声が聞こえる。お前が意地悪するからだ、と考えながら、涙がぽろぽろとこぼれてしまう。

「んん……っ!」
 熱い質量を持っていたそれが中でさらに大きくなる。皆川の顔が見たかったけれど、背後を見る余裕はとうにない。
 
 余裕を失ったのは皆川も同じだったようだ。なんとかこらえたように荒い息を吐く。
「……いきなりそういうの、反則、……」
 皆川の色っぽく掠れた声が聞こえて抽送が始まる。その場所を何度も突かれて高階の理性は完全に飛んだ。 

「あっ……あっ……あっ……!」
「高階……」 
 身体が勝手に皆川の動きに合わせてしまう。絶頂が近くなった皆川が動きを止めると、やめないで、と高階は泣きながら口走った。
 
 一際高い声を上げて高階が達してしまうと、追いかけるように皆川も腰を震わせた。


 

 
 →  3. 
 
 

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