オリジナルファンタジー長編小説

□Night×Cross 序章
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ナイトクロス

序章

 昔々、アデナ王が治める大地と海があった。
 しかし、王家の支配に異を唱える反乱組織によってアデナの時代は終わりを告げる。
 反乱組織と王家に属する者達は己の正しさを貫くため、長く戦った。
 その結末は、反乱組織の勝利に終わる。
 王はその座を追われ、アデナ王家は歴史の表舞台から姿を消した。

 長い戦いの時代が終わり、世は、静かな平和の時代を迎えた。 
 しかし、その“平和”は、仮初のものでしかなかった。
 戦がないというだけで、民の苦しみは変わらなかった。
 新たな王の下に集った貴族たちは、平民から重税をとり、私腹を肥やしている。
 更に、その搾り取った金を海軍につぎ込み、刃向かおうとする平民を押し黙らせる。

 貧困に苦しむ平民 欲望のままに生きる貴族 貴族のために働く海軍

 静かな平和の世は、長く暗い夜に似ていた……。


 夜――月も明るい夜だった。王国、スプレンド領の港町。薄汚れた街からは、貧しさを吹き飛ばすような陽気な笑い声が聞こえる。灯りの漏れた酒場からは、大人の男達の声に混ざって少女の声も聞こえてくる。

 飲めよ 騒げよ 今夜は宴だ
 邪魔する者は 何もなし
 余計なことは 忘れてしまえ!

 犬が鳴こうが 兵隊が来ようが
 そんなの俺たちゃ 関係ない

 酒場の真ん中のテーブルに座った一人の少女を、赤ら顔の大人の男達が囲んでいる。彼等は酒を片手に楽しそうに笑っている。その顔を見て、少女もとても幸せそうに笑っている。
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