オリジナルファンタジー長編小説

□Night×Cross 第四章王子
1ページ/7ページ

第四章王子

 アデナ海最強の海賊ナイトクロスが沙座の海を去って、数日後。亜沙華の港にアデナと沙座を結ぶ定期船が到着した。そこから降りてきたのは二人の賞金稼ぎ。一人は短い銀髪で、綺麗な薄紫色の瞳を持った少年。もう一人は、金色の髪を肩まで垂らした青年だ。
 小柄な少年は、初めて来た亜沙華に興味津々な様子で、しばらくその場に立ち止まったまま、街を眺めていた。
「やっぱり、僕らの国とは建物も空気も、人々も違ってるんだね。凄く気持ちが高ぶってくる気がする……」
 わくわくした表情で銀髪の少年、フェスが言った。キラキラと輝き出した少年の目を見て、青年はニッコリと笑った。
「文化も違うし、観光するところでもないから、商人たち以外は余り立ち寄らないしね。ユトアの影響も受けないんだろう?ま、海賊は別だけど」
「ユーグ……」
 青年、ユーグの表情が固くなった。不安そうに、心配そうにフェスがユーグの顔を見上げる。
 二人は賞金稼ぎとして、ある海賊を追って沙座の港、亜沙華にやって来たのだ。この港町は、沙座の大きな港町としてだけではなく、海賊の町としても有名である。海賊たちにとっては理想の港であるが、賞金稼ぎにとっては地獄も同じだ。つまり、二人は今、敵地のど真ん中にいるのである。海賊の情報をくれた情報屋にも、亜沙華に行くことは止められたが、それでも二人には行かなければならない事情があった。
「よし、行こう!早く情報を摑まないと。僕らはなんとしても彼等を捕まえなくちゃいけないんだから」
 やる気満々で、フェスがユーグに言った。フェスのそんな一生懸命なところを見ると、ユーグはいつもある人物を思い出す。ユーグもやる気が出てきて、頼もしい表情で頷いた。
「ああ。とりあえず、適当に酒場を――」
 言いかけて、ユーグが口を閉じた。フェスが不思議に思うと、周りは既に数人の屈強な男たちに囲まれていた。だらしない格好と、腰に見える剣が彼らが海賊であることを証明している。
「よぉ、お兄さんたち。この港になんか用か?」
「せめて海賊のフリでもすりゃあいいのにねぇ?」
「ケケケッ。賞金稼ぎが、俺らの餌食になりに来てくれたぜ」
 やはり危険な町だった。賞金稼ぎは海賊にとって敵だ。ただでは返してくれそうもない。フェスが服の下に隠した短剣に手をかける。だが、ユーグはそれを制して、海賊たちを見据えた。
(こんな場面、前にもあったな。だけど、やっぱり退けない)
 決意し、ユーグは海賊たちに尋ねた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ