オリジナルファンタジー長編小説

□Night×Cross 第五章仲間
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第五章仲間

 アデナ海――霧の立ち込める夜――。北のスプレンド領から南のティテ領まで荷を運ぶ貨物船が暗い夜を進む。
 嫌な寒気がして、船の責任者――スプレンド伯爵に使える男――は目を覚ました。
 まったく、嫌な夜である。天候が悪くなる気配があるから、今回の航海は延期しようと申し出たのに、スプレンド伯爵は耳を貸してくれなかった。急いでいるからといって、海軍に護衛船を依頼するヒマも与えられなかったほどである。一刻も早くこの積荷をティテ男爵に届けなければならないらしいが……やはり、こんな悪天候になってしまった。
 落ち着くことができず、船の責任者は部屋から出て、廊下をウロウロした。
「まったく、人使いの荒い。いくら伯爵でも酷すぎるっ!」
 口を付いて出るのは雇い主に対する文句だ。本人にさえ聞こえなければ、言いたい放題である。
「偉そうに!積荷一つ運ぶのだって大変なのを分かっていないんだ!あんな、あんな貴族なんて――」

 沈めてあげる――

「えっ?!」
 思っていたことを別の何者かが口にした。その言葉は旋律に乗り、なおも続く。

 なぜ 私を拒むの
 なぜ 私から離れていくの

「な、なんだ?!この声は!誰が歌なんかうたってる?!」
 恨みのこもった女の声は、霧の中に漂う船に響き渡る。静かな海の上、暗い船の中、歌声だけが彼の体を包んでいく。

 私は、暗い海の中

 なぜ 共に沈んでくれないの
 なぜ 私だけ置いていかれるの

 そんなことは許せない

 貴方も、冷たい海の中

 沈めてあげる――
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