オリジナルファンタジー長編小説

□Night×Cross 第七章邂逅
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第七章邂逅

 壊れた船を直すため、ナイトクロスは優れた技術と素晴らしい腕を持つ職人がいる港―ティテ領を目指した。
 ティテ領は今、年に一度の祭りで大変盛り上がっている。豊漁と、一年の幸福を願うために、船の形をした大きな屋台を造り、それを人々が引いて回るのだ。この祭りを見るために各地から観光客がやって来るため、港への船の出入りも激しい。そんな中、ナイトクロスは出入りする一般の船に紛れてティテ領の港に入港した。
 入港すると、面倒な手続きをケンデンとジェムに任せ、ヴォーテクスはナギを連れて港を離れた。入り組んだ裏道を何度か曲がり、辿り着いたのは、一軒の古い小さな家だった。
「ねぇ、ヴォーテクス。なんでこんな町の裏っかわみたいなとこに来てるの?」
 ここまで訳も分からずに連れてこられたナギが尋ねる。だが、ヴォーテクスは笑って、
「まぁ、すぐに分かるさ」
としか言わない。そしてノックもせずに、いきなり家の扉を開けた。ヴォーテクスが一歩足を踏み入れると、突然、何かがヴォーテクスの顔めがけて飛んだ来た。それを素早くヴォーテクスが素手で摑むと、部屋の奥からしわがれた声が聞こえてくる。
「不法侵入は犯罪だぜ?」
 男の声が聞こえてきて、ヴォーテクスの笑みが増す。驚いて何も言えないナギをほったらかしにして、彼は先ほど摑んだ果物ナイフを片手で遊んでいる。
「海賊には通用しねぇって言ったのはアンタだろ?」
 言い終わると同時に投げ返されたナイフは、見事に部屋の壁に突き刺さった。しわがれた声が上機嫌に笑う。何も分からないナギは、ただ黙って部屋の奥から現れた男を見つめた。白髪交じりの茶髪に、鮮やかな紅の瞳が印象的な男だった。その鮮やかな赤が、懐かしそうにヴォーテクスを見る。
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