オリジナル小説
□風の日の彼女
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今日は風が強い。本日の天気は、晴れのち曇り。
バッチリ決めた髪型も、クリーニングから戻ってきたばかりのスーツも、玄関を出ればくしゃくしゃだ。
苦手な早起きしてカッコよく決めたのに、これじゃあまるで寝起きのだらしない男。ボサボサになった髪を押さえつけて見上げた空は灰と青のまだら。最近癖になったため息を吐いて僕は、もうどーでもいい、と無責任な言葉を心に吐いた。
朝の交差点。人混みに紛れても冷たいビル風は容赦がない。右手に持った新品の鞄には、携帯、財布、ハンカチ、A4ファイル、その他諸々。素材と中身が軽くても、これに課長の期待と同僚との比較を加えると十キロになる。それが僕には重たくて、気がつけば足が遅くなる。ノロノロと交差点を右に曲がると、走って来た女子高生が僕の肩にぶつかった。その拍子に僕の体は右に傾いて、汚いアスファルトに尻もちをついた。
きっとズボンは汚れて台無しだろう。それでも、立ち上がらないと僕は会社に行けない。
(カッコ悪い)
立ち上がって、汚れたところを片手で払った。重い鞄を捨ててしまおうか。