オリジナル小説

□西の森の魔法使い
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 幾重にも折り重なる様々な世界。
 その中の一つに、人と精霊が暮らす世界があった。

 精霊とは、自然の力が人や動物の姿として現れたものである。長い年月を生きる巨岩や大樹は、強い力を持つ精霊となって形を取った。
 しかし、精霊は普通の人間の目には見えない。精霊が見える者、精霊と対話し、知識を得て自然の力を操る者は、『魔法使い』と呼ばれた。

 ある時、一人の魔法使いが、国を興した。
その魔法使いは、火の精霊、水の精霊、風の精霊、土の精霊、すなわち全ての属性の精霊と対話することが出来、精霊たちの頂点に立つ光の精霊『ディーヴァ』を呼びだすことが出来た。
魔法使いは国に結界を張り巡らせ、外国との接触を絶った。豊かな大地を狙う外国の脅威から守られた民は喜び、魔法使いを国王として敬った。
 人々は、魔法使いを尊敬の念をこめてこう呼んだ。
 精霊たちに愛されし者――精霊(せいれい)の愛(まな)――と。

 高い山脈と、深い森、広い平原に囲まれた王国、ディー王国。
 偉大な魔法使い、精霊の愛が興した国で、大地は精霊たちに愛されていた。天候は一年中穏やかで、四季も緩やかに移りゆく。作物も豊富に収穫でき、山には宝石の鉱脈があった。
 尽きない富と豊かな大地。閉ざされた王国は、檻の中の楽園に似ていた。

 この物語は、そんな王国の隅っこで、それなりに一生懸命生きている、一人の魔法使いとその使い魔の話である。
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