ヴァンガード
□いちごミルク
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よくよく考えてみれば、僕は恋をしたことが無い。
つまり初恋すらもまだと言うこと。
憧れという感情ならいくらでもある。
ミサキさんはクールで美人だし、あの記憶力も凄いと思う。
カムイくんのファイトだって、勢いがあって格好いい。
僕が一方的に慕っている櫂くんは、ずっとずっと、もう何年も前からの憧れの人だ。
−−−でも。
これは憧れでしかなくて、そもそも相手は男女問わないし、恋と呼んでしまったら、僕は凄く気の多い男になってしまう。
「アイチ」
後ろから呼ばれた名。
良く知った声に、心地良いトーン。
僕が憧れて止まない櫂くんの声だ。
「櫂くん!」
「いちごミルク、好きか?」
あまりにいきなりすぎる問い掛け。
櫂くんの口からいちごミルクと言われると、ギャップのあまり可愛く思えてくる。
「う、うん…好きだけど…どうして?」
「そうか…ならやる」
ずいっと差し出されたピンクが主体のパッケージは紛う事なきいちごミルクだった。
ふと、近くにコンビニがあったことを思い出す。
そこで購入したのだろうか。
「えっと…ありがとう…でも、なんで…」
「…気分じゃなくなっただけだ」
そういう彼の提げているコンビニ袋には、コーヒーらしき缶が入っている。
なぜ2つも購入したのか、とは聞かないでいよう。
櫂くんが『気分じゃなくなった』というのならきっとそうなのだろうから。
「…ありがとう」
隣を歩くクールな彼の横顔を見上げて、もう一度お礼を言う。
だってなんだか凄く嬉しかったから。
いちごミルク1つ。
だけど、櫂くんが僕の為に買ってくれたみたいで、僕の心は舞い上がっていた。
…やっぱり僕にとって、櫂くんは一生特別らしい。
えんど
いちごミルク美味しいです(゚∀゚)ウマウマ