よろず

□所有権
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「穂積さん…」
「んー?」
「あんた…良い年してなんて格好を…」
「なかなか可愛いだろう?」
「…それ、どうしたんですか」
「キヅがくれたんでね。」
あの人、変なものばっかくれるんだよなぁ…なんてぼやく彼は、確信犯か否か。
黙ったままの僕を見て笑う。
「お前と遊べ、ってな。ほら、まだキレイな新品だろ。」
そう言って、卸したての上質な生地を見せて証明してみせる。
なにも言ってないのに。
また勝手にローディングされたのか、それとも、彼の洞察眼の賜物か。
いずれにしても、穂積は僕が不穏な気持ちになることを分かっていて、そのキヅから貰い物だと言うセーラー服を、この僕の前で着てみせたのだ。
「本当、人が悪いな、あんたは」
「ふっ…今更、だろ?…なぁ、久世。今日は遊んでくれねぇの。」
此方を伺うその瞳が少しだけ揺れている。そんな深層の表れさえも、相手が穂積慎之介であれば、意図的に感じられてしまう。
「それは脱いで下さい。それから、二度と僕の前で他の人からの貰いものを着たりしないで下さい。…酷くしたくて、堪らなくなる」
自分の中の仄暗い衝動が小さく燃え上がるのを感じる。
王子と謳われる僕は、案外そういうことが出来てしまうタ
イプの人間だ、と最近身を持って知った。
「お前になら、酷くされたっていいのに。」
「いいから早く脱いで。そんなにコスプレしたいなら、今度僕が買ってきますから。」
「ははっ、いいねぇ。約束な?」
そう言って、楽しそうにセーラー服を脱ぎだした穂積は、快楽主義者特有の笑みを浮かべていた。
底知れない、と解けない警戒心を抱きながら、僕は彼に手を伸ばした。


→あとがき
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