短編小説

□離れた温もり…
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ピッピッ・・・・

真っ白な空間

部屋に鳴り響く無機質な音…

窓から見える青い空

たくさんの管…

横たわって寝てるのは愛おしい存在…

俺の最愛の恋人…



何気ない平穏な日々を過ごしていたはずなのに…

いつもの道を二人で歩いていた…

男同士だったけど手を繋いで

離れないようにきつくきつく握っていた

なのに…

そんな俺たちに一つの車が突っ込んできた…

美樹は俺をかばうために手を離した

強く握り締めていた手は驚くほど簡単に解けた

俺が守るべきだった…守らないといけなかったのに

「み…き?嘘だろ?…」

俺の目の前に広がったのは血だらけになった恋人の姿だった…

「うわぁぁぁぁぁぁああああ!!!!」

俺は何も考えられなかった…

いつの間にか救急車がきて美樹を連れていった…

呆然としている間にすべてが終わっていた

手術が終わり真っ白な部屋に入ると

たくさんの管につながれた美樹…

近くで泣き崩れている両親…

…何もいえなかった…

自分がどんな表情をしていて、どれだけ心が弱っていたとしても…

―なんで…俺じゃなかったんだろう…―

なぜ?なんで?

疑問だけが俺の中で渦巻いていた…




季節が移ろい美樹が眠って半年がたった…

ピッピッ・・・・

ピクッ

美樹の指が動いた気がした…

「美樹?…俺の声が聞こえるか?」

すると声に反応したのか指がまた動いた…

「美樹?…美樹!!」

「しょう・・・た?」

半年振りに美樹の声を聞いた…

「美樹・・・」

俺は泣きそうになった…

「しょう、た。ごめんね?悲しませて…眠ってる時翔太の声が聞こえた気がした…」

声は聞き取りづらいけど精一杯言葉を紡いでいた

「…翔太…愛してくれてありがとう…僕と出会ってくれてありがとう…」

「なんでそんなお別れみたいなこと言うんだよ…?」

「…最期に…愛してるよ、翔太…」

伸ばしかけた腕はベッドの上に落ちた…

ピ―――――――――

「…み、き…俺も愛してるよ…」

ほんのり温もりの残った唇にキスをした…


俺はお前のことを忘れない・・・

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