短編
□Please kiss me!
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『…はじめ君、』
突然名前が俺の制服の裾を小さく握った。
「…どうした、名前。」
俺が訊けば、少し戸惑ったように頬を染めた彼女。
一体どうしたと言うのだ。
『あ、あの…ひかないで欲しいんだけど…』
そこまで言って再び黙る名前。俺が彼女の目を見つめて先を促すと、意を決したように俺の制服を掴んだ手に力を込めて、口を開いた。
『あ、あの…キス、したいなぁ…なんて…』
言ってから既に赤い顔をさらに染めてうつむいてしまった名前。
俺はといえば、彼女の予想外な発言に驚き、目を見開いていた。
『やっぱり…イヤ、だよね…ごめんね、いきなりこんな事…』
いきなりシュン、と暗くなる名前。俺から離れようとする腕を右手で掴み、彼女の顎を左手ですくってそのまま唇を重ねた。
『っ…!』
名前は目を大きく開いていて、かなり驚いているらしい。
俺は角度を変えて何度も口づけた。
『ん、ふっ…』
次第に目を閉じ、俺の口づけに応える名前。
俺は彼女の腕と顎を掴んでいた手を後頭部と腰に移動させ、さらに口づけを繰り返した。
『ん、はじめ、く…っ!』
しばらくすると息がもたなくなったらしく、俺の胸元をギュッと握って知らせてくる。
名残惜しくも唇を離すと、彼女の潤んだ瞳と目が合った。
『…はじめ君、』
「…どうした、」
『…大好き』
真っ赤な顔で上目遣いをしながら言う彼女を、思い切り掻き抱いた。
そして、彼女の耳元で囁く。
「…俺もだ。」
嬉しそうにはにかむ名前を見て俺は思った。
今日は遅くまで帰してやれそうにない、と。
Please kiss me!
(いいなーはじめ君。)
(そ、総司…!?)
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