薬売りさんとの旅

□薬売りさんと私
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「ここに、毒でやられた方がいると…聞きまして」




大きなお屋敷に入る

私は念のため、布で顔を隠している




「おじゃまします…」

そこには1人のおじさんが布団に寝かされていた

私は素早くそのおじさんの症状を確認する




「発熱…全身に発疹…爪の変色…」

間違いない

「亥酸です」




すると薬売りさんは少し微笑んで

「では、この薬を…」

おじさんに差し出す












「それは…一体なんですか?」












後ろを振り返るとそこには1人の男






「あ、この人…」






私から亥酸を買った人だ




隣の薬売りさんは私の布で見えない表情を察知したのか


「ただの…薬、ですよ」

おじさんに解毒薬を飲ませながら言う

「残念ながら…解毒薬じゃぁ、ないんです」






「そうですか」







私は見逃さなかった







「早く良くなってもらいたいものです」







彼の顔にほんの一瞬だけ安堵の表情が現われたところを




「では、私はこれで…」

彼は部屋を出て行った

それと入れ替わりでおじさんの奥さんが入ってくる



「その薬は本当に効くのですか?」

「はい、旦那さんきっとよくなりますよ!」







だってその毒を作ったのは私なんだもの








「ところで、奥さん…」

薬売りさんが口を開く




「先ほどの男は一体…誰なんで?」




奥さんの顔がほんの一瞬だけ変わった




「ああ、あの男は下働きの…」





ああ、この顔は






「弥一、といいまして」






今までたくさん見てきたから分る






「大変働き者でいつも感謝しております」









奥さんはなにか隠してる









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