パラレル
□幼なじみ
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小さい頃の記憶だから、あまりはっきりとは覚えていない。
でも、ぼんやりと覚えてはいる。
緑色の頭のあいつのことを。
マンションの隣の部屋に住んでいて、いつもベランダから遊びに来た。
"いつまでもいっしょにいような"
"おれがまもってやるから"
男のクセに泣いてばかりいたおれの元に来てはそんな言葉をかけてくれた。
そして同い年だったおれ達はいつも一緒に遊んでいた。
…そんなあいつはもういない。
確かおれが小学校に入る前に引っ越していった。
おれの隣の部屋はずっと空いたまま。
いつか帰って来るんじゃねぇかと、小さい頃は心のどこかで思っていた。
だが、大きくなるにつれわかってくる。
あいつはもう、帰ってこない……
でも、できることならもう一度会いたい。
高校生になった今でも、心のどこかで願っている自分にたまに気づいて驚く。
そんな事はありえない筈なのに。
名前も顔も、何も覚えていない"あいつ"。
…まさか、また会えるとはその時は思ってもみなかった。
そして、この気持ちの名前も、まだガキだったおれには分かっていなか
った。
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