あなたへの月

□結論:君は俺のもの。
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「タマー。今日駅前に新しくできたカフェ寄ってこー」
「いーよ」
「環(たまき)くん、あとで相談乗ってくれる…?」
「おれでよかったら力になるよー」

流行に敏感なユリナちゃんがおれの腕を取ってぎゅーっと抱きつく。高校生とは思えないほどグラマラスな体型をしてるから、柔らかい感触がモロに伝わる。「胸あたってるよ」前そっと忠告したとき、「なんだったらタマなら揉んでもいいわよ」とからかい混じりに言われた時はびっくりした。けどハキハキとしたどちらかといえば男っぽい美人なユリナちゃんは、いつも誰に対してもそんな感じだしね。おれもすぐ笑い返した。
小柄で控え目なサキちゃんが、眉を下げて申し訳なさそうにくいっとおれの服の裾をひっぱる。最近隣のクラスのサッカー部の男に片思い中らしいから、多分その人関連のことだろうなあ。上目使いで見上げてくるサキちゃんは文句なしに可愛い。思わず頭をぽすぽすと撫でると、ユリナちゃんもずるいーとサキちゃんに抱きつく。可愛い女の子がふたりできゃっきゃと戯れているのを見るだけで癒される。おじーちゃんみたいだなおれ。
横でにこにことその様子を見ていると、

「うーわ、また女はべらかしてるよあいつ」
「さすが王子」

人目も気にせず教室でやっていたからか、前からおれのことを気に入らないって思ってる男子が聞こえるように嘲笑した。
――仲のいい女の子の一人が、冗談でおれを「王子」って呼んだのを聞いたまわりの男子たちが、からかい混じりに呼ぶようになった。それだけなら別にいいけど、おれが寄ってくる女の子を手当たり次第に喰ってるっていう根も歯もない噂が流れていて、本当に迷惑してる。大体、女の子と一緒にいるってだけですべてをセックスとかに結び付ける男子高校生特有の性欲満載な下品な妄想に引く。おれは「あいつ」とは違うんだから。…だから男は下品で嫌いなんだよ。

なんとも言えない顔でそいつらを見ていたら、二人が戯れるのをやめておれを見つめる。




 
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