SHORT

□誕生日
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明日はハルの誕生日だ。

しかしやべぇ。

プレゼントを用意してねぇ!

俺の誕生日にアイツからケーキと香水を貰った。

ケーキは甘さ控えめで、香水も俺好み。

さすが俺の女だぜ。

って話を戻すが、俺はハルのプレゼントを前の島で買い忘れたんだ。

しかも航海士の話では、次の島まではまだまだかかるらしい。

チクショウ!

なんでこんな時に時間かかるんだよ!

まぁグランドラインだから何があっても可笑しくないし、あるのが当たり前だからな。

でもマジタイミングわりぃ。

クソッ!

どうすりゃ良いんだ!

俺は食事中もこの事を考えてイライラしていた。

ハルはそんな俺を気遣ってくれるが、その優しさに俺は答える事が出来ているのだろうか、と柄にもなく思っちまう。

誕生日すら祝ってやれねぇ…

俺はハルから色んなものを貰った。

物でも物以外でもたくさん貰った。

なのに俺は?

ハルは俺の事を一番に考えてくれる。

だが俺は俺の夢だけを追って、アイツに何もしてやれてねぇ。こんなんじゃいつか捨てられちまうんじゃねぇか…

あーあ。

またしても柄にもなく落ち込んじまったぜ。

そうやって1人悶々としながら歩いていると後ろからキラーが声をかけてきた。

「どうしたんだキッド」

俺は1人で考えても埒があかねぇと思ったからキラーに相談した。

「いや、実はよ…」

俺が良い終えるとキラーは鼻で笑いやがった。

「なんだそんなことか。アイツならお前がくれるものはなんでも喜ぶだろ」

ああ。

確かにアイツは何をあげても喜んでくれるだろうよ。

でもそれじゃ意味ねぇんだ。

アイツが欲しい物を俺があげたいんだ。

クソッ!

ハルの好きな物が分からねぇ…

欲しい物が分からねぇ…

「物が無理なら、手作りをプレゼントしてみるのはどうだ?」

「手作り?」

「ああ。菓子類ならハルも好きだろ」

それに料理は愛情たっぷりだぞ、と仮面の下で笑っているキラーを軽く睨みながらも俺はその案に乗った。

考えても出てこねぇなら俺の愛情をたっぷり込められる手作り菓子をやろうじゃねぇか!

そうと決まればさっそくコックに相談しに行く。

勿論俺が料理をするなんて初めてのことだからコックに教えてもらうつもりだ。

いくら料理が初めてだとしてもハルに不味い食い物なんてやれねぇからな。

腹壊されたら困る。

だから俺は頑張ったんだ。

あんなに必死になったのは久しぶりなんじゃねぇかと思う程だ。

何度も失敗し、それをクルーに食わせて処分し、また作り直して、を繰り返し、やっと見た目がましなやつが出来た。

そのケーキに生クリームやらクッキーやら色々装飾していく。

日付が変わるまで後10分。

俺は作ったケーキを冷蔵庫に入れ、ダッシュで一旦部屋に戻って風呂に入り、ケーキを持って0時ちょうどにハルの部屋に行った。

ノックしてみても返事はねぇ。

まさか…

まさか寝てるのか?

俺はゆっくりドアを開けると案の定電気は消えて、ハルは布団の中でも寝息を立てていた。

呆れたぜ…

俺は溜め息を吐いてから中に入り、電気を点けた。

しかしハルは全く起きねぇ!

どんだけ爆睡してんだよてめぇは!

俺は1人心の中で怒鳴り、ハルへ近寄った。

ベッドに足をかけてからハルの唇に深いキスを落とす。

「…んっ」

ようやくハルは目を覚ました。

「…キッド?」

どうしたの?と言う顔で俺を見上げている。

俺はハルを抱きしめ、耳たぶをひと舐めし低く囁いた。

「HAPPY BIRTHDAY ハル…」

ハルは顔を真っ赤にしながら笑う。

チクショウ!なんて可愛いんだ!

この可愛さは懸賞金がかかるぞ!

俺は再びハルに深いキスを送って、ハルの目がトロンとした頃にハルを抱き起こし、ベッドに座らせてからケーキを渡した。

「…誕生日プレゼントだ」

「え…キッドが作ったの?」

「わりぃかよ」

照れ臭かったので俺は顔を反らした。

「ふふっ。キッドありがとう!すっごく嬉しい!」

ハルはそう言って花が咲いたように綺麗に笑い、俺の頬っぺたにキスしてきた。

チクショウ、ますます可愛いじゃねぇか。

俺はきっと真っ赤になっているだろう顔を見られないようにハルを抱き寄せて耳元で囁いた。





「生まれてきてくれて、ありがとうハル。愛してる…」








END

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