SHORT
□誕生日
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とある島に物資調達の為、俺たちハート海賊団は停泊している。
今日はハルの誕生日だから二人で街をまわる事になった。
いつもならめんどくせぇが今日は特別だ。
ハルの行きたいところへ連れて行ってやるか。
「おいハル。どこか行きたいところはあるか?」
「ん?どこでも良いの?」
「ああ。今日は特別だ。好きなところを言え。連れて行ってやる」
「本当に?嬉しい!」
ハルはパアッと明るく笑い、ながら目を輝かせて通りのたくさんある店を見まわした。
暫くすると行きたい店が決まったのか、ハルは俺の腕を引っ張って歩き出した。
向かった先は服屋。
なんとなく予想はしていたから別に驚きはしない。
その服屋は結構広く、春用の服がメインだが、他の季節用の服もたくさん店頭に陳列されていた。
「ねぇロー、洋服買ってもいい?」
「ここまで来てるのに今さらだな。ああ、良いぞ。いくらでも買ってやる」
「ふふ、ありがとうロー!」
そう言って笑ったハルは無邪気な子供の様で、つい俺まで微笑みを返してしまったくらいだ。
ハルはお礼を言った後すぐに商品棚に向かって行ったので俺の微笑みには気付かなかったらしい。
良かったぜ…。
見られたらなんとなく俺らしくない気がするからな。
商品棚で色々手に取り、体に合わせて鏡を見ているハルを俺もハルが似合いそうな服を選びながら見ていた。
きゃぴきゃぴしながらハルは何度も鏡を見て悩みながらも服を選んでいる。
本当に女ってのは買い物が好きだよな。
似たような物なんか買っても意味ねぇのに。
でも服を一生懸命楽しそうに選ぶハルを見ているとそんな事は口には出せねぇ。
まぁあいつの嬉しそうな顔が見れるならなんでもいい。
「ロー!これとこれ、どっちが良いと思う?」
ハルは右手に薄い黄色のシフォンワンピを持ち、左手には真っ白なシフォンワンピを持って俺に問いかけてきた。
どっちも同じようにしか見えない。
どちらを買っても同じ気がするが、ハルはそうじゃないようで、左右交互に自身にあてがって見比べている。
「決められねぇなら両方買えばいいじゃねぇか」
フッ…
さっき自分で思った考えを覆す言葉を俺自身で言うなんてな。
笑えるぜ。
でも一生懸命に選ぶハルがあまりにも可愛いからそう思っちまうのは仕方ねぇだろ。
結局はハルが喜べばなんでも良い。
似たような物をいくらでも買ってやる。
俺をそう思わせるのは世界中でハルだけだ。
それくらい俺はハルに惚れている。
俺は医者だがこの病気だけは治療法も薬も知らねぇ。
まぁ知っていたとしても使わないし、必要もないがな。
「ハル、今日は何でも買ってやるって言っただろ。すきなだけ選べ」
「!ありがとう、ロー!」
ハルはにっこりと笑って、持っていた服を両方ともカゴへと押し込んだ。
既にカゴは服で溢れているが、俺はハルが嬉しそうに笑っているので何も言わなかった。
その後会計をし、巨大な袋を俺が持ち、次は靴屋へと向かった。
そこでもやはりハルは大量に選んでいく。
「おい、しっかり足に合わせて買えよ。形崩れや、足を痛める原因になるからな」
外科医としてそれは見過ごせない。
ましてやハルの事なら更に見過ごせない事だ。
俺は先ほどの服屋とは違い、ハルが持ってくる靴をいちいちチェックして購入させた。
時々ハルからいちいちうるさい、と言われたが、ハルが靴擦れ等で苦しむ姿を見るよりましだ。
だから俺はそれらを無視して乗りきった。
「ロー、今日はこんなにたくさん買ってくれてありがとうね!すっごく嬉しいよ!」
「ああ」
少し疲れたし小腹も空いたと言う事で近くのレストランに入り食事をしていると突然ハルはそう言ってきた。
その顔は本当に嬉しそうで、俺も買ってやってよかったと思った。
食事を終えてしばらくのんびりしていたが、ウェイターがチョコレートケーキとシャンパンを運んで来た。
「え!何これ!」
いきなり目の前に注文していないケーキが現れ、プチパニックになっているハルだが、実は先ほどハルがトイレに行っている間に俺が頼んでいたのだ。
「俺からの誕生日プレゼントだ」
「ロー…洋服も靴もたくさん買ってもらったのにケーキまで、ありがとう!」頬を赤く染めながら礼を言うハルはなんて可愛らしいんだ。
おいウェイター、見てんじゃねぇよ。
バラバラにされてぇのか。
そうか、そうか。
ならその望み後で叶えてやるよ。
俺のハルの笑顔を他人が見るなんて許せねぇ。
俺はここがレストランの1席であり、ケーキを切り分けているウェイターが側にいることも気にせず、目の前のハルにキスをした。
「んっ…ちょっとロー!こ、ここ、レストラン!」
更に真っ赤になって避難するハルはますます可愛いぜ。
だから俺はもう一度キスを贈ってやった。
ふん。
どうだ見たかウェイターめ。
「誕生日、おめでとうハル。今夜はたっぷり愛してやるからな」
「なっ!」
こんなところで何言うのよ!、と真っ赤な顔で憤慨しているハルを無視して俺はウェイターからケーキを受け取り、未だにピーチクパーチク開いているハルの口に切り取って入れた。
「だいたいね、ここは公共の場なのよ?その辺もうちょっと考えんぐっ!」
「美味いか?」
「っ、美味しいよ!」
真っ赤な顔のまま睨んでくるハルだが、俺が差し出すケーキを次々と頬張る。
フッ。
素直じゃねぇな。
でもそんなところがいいんだよな。
俺が食わせてやる女は今までもこれからもハルだけだ。
ヤバイな。
そーとーハマっているらしい。
でもハルになら溺れてもいいと思う俺がいる。
グランドラインでの船旅は危険が常に迫ってくるが、こいつは何があっても俺が守る。
大切な女だ。
「ハル…、HAPPY BIRTHDAY」
腰を上げてハルに近付き、耳元で囁くとハルは茹で蛸のように赤くなり俯いた。
「愛している…生まれて来てくれてありがとう…」
そう言ってハルの額にキスをした。
END