SHORT
□ケンカ
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「おい、ハル!」
エースは甲板でクルー達と仲良くはしゃいでいたハルを見つけ、呼びつけた。
「ん?なぁにエース?」
「ちょっと、こっちにこい!」
エースはハルの手を引いて船内に入った。
「何か用?」
「お前、あいつらと何喋ってたんだよ?」
「え?うーん…色々かな」
「……随分楽しそうじゃねぇか」
「え?うん、まぁ楽しいよ!みんなお喋り上手だし」
「あっそ」
「エース?」
「もういい。あっち行けよ」
「は?」
「もうお前の顔なんて見たくねぇ」
そう言ってエースは廊下を歩いて行ってしまった。
残されたハルはエースが意味わからなく、戸惑いながら立ち尽くしていた。
それから夕飯の時間になっても、エースは食堂に現れず、ハルは先程の事が気になったので、エースの部屋を訪れた。
しかし、ノックをしても返事はなく、声をかけてから中に入ってみてもエースの姿はない。
仕方がないので船内を探していると、船尾の方からエースの声が聞こえた。
ハルは船尾への扉を少し開けた時、エースとナースの1人が寄り添って話ているのが目に入って来て、反射的に扉を閉め、走り出していた。
(なんで?なんで、エース…どうゆうこと?)
先程の光景が頭から離れず、何度も何度もリピート再生される。
ハルは無我夢中で廊下を走り、船首までやって来て、その場で座り込んでしまった。
瞼を閉じれば先程の光景が浮かび、ハルは涙が溢れて来るのを、必死に耐えた。
手摺に前屈みにもたれながら、暗い海を見つめて、無心になってみるが、やはり頭の中にはエースとナースがいて、ハルは胸が苦しくなるだけだった。
流れる涙を堪える事もせず、ただひたすらに風を感じながら遠くを見つめていると、不意に後ろから声をかけられた。
「ハル、どうしたんだよい?」
マルコが心配そうな顔をして聞いてくる。
そんなマルコに、今は笑顔を向ける程余裕はなく、問いかけに答える事もなくハルは俯いているだけだった。
「…エースとケンカでもしたのかよい?」
ハルはその問いかけに、首をコクリと動かすだけで、他には何も言わずにいた。
「そうか。そりゃあ辛いな。だが、1人で悩んでないで、誰かに相談しろよい?」
マルコがハルの頭をポンポンと軽く叩き、優しく諭した事によって、ハルの中で張りつめていた何かが切れ、マルコに抱き着いて大粒の涙を流した。
「急にどうしたんだよい?」
マルコはそんなハルに驚くが、優しく背中をトントンと叩いて、あやした。
今のハルにはそんなマルコがとても温かく感じ、余計にすがり付いて泣いた。
しかしマルコは嫌な顔一つせずにハルをあやし続けている。
そんな時、二人の後ろから低い声が聞こえた。
「何してんだよ」
その声に慌てて顔を上げると、エースが物凄く怒りを露にして、立っていた。
「マルコ、てめぇ…」
エースがマルコを睨み付けているが、マルコは気にも止めずに、堂々とし、未だにハルの背中を優しくトントンと叩いている。
それに気付いたエースは更に怒りを増した。
「ハル!こっちに来い!」
しかしハルは、エースを無視してマルコに抱き着いたままでいた。
「ハル!」
「いい加減にしろよい、エース」
「あ?なんだと?」
「てめぇがハルに酷いことしたんだろうが」
「は?」
「自分の女1人扱えねぇ野郎が、意気がんなよい」
「なんだと?マルコてめぇ、燃やされてぇのか?」
エースの怒りが増す中、マルコの目付きもキツくなっていく。
ハルはマルコに片腕で抱き締められたまま、マルコの胸板に濡れた顔を隠すように埋めて、事の成り行きを聞いていた。
大人しくマルコに抱きしめられているハルにエースの怒りは頂点に達する。
エースはハルの右手を引っ張って、マルコから引き離そうとするが、それをハルが拒んだ。
「イヤッ!」
「なんだよ!俺よりマルコの方が良いのかよ!」
「………」
「どうなんだよ!」
「…エースだって、私より、ナースのお姉さんの方がいいくせに!」
「は?」
「私見たんだから!さっき、船尾で寄り添っていたのを!」
「………」
「私が、要らないなら、そう言ってくれれば良いじゃない!」
「………」
「隠れてあんな事されるより、直接言ってくれた方がましよ!」
ハルは涙を目に溜めて、泣くのを堪えながらエースに言う。
「…エースより、マルコの方が、いい」
だからあっち行って、と言い、ハルは再びマルコに抱き着いた。
エースはその場に立ち尽くしていたが、再びハルの腕を自分の方へ引っ張って、ハルを抱きしめた。
「やだ!放してよ!」
やだやだと暴れるハルをエースは力強く抱きしめ、動きを封じる。
「ハル、聞け!俺はお前が一番だ。浮気なんてしてねぇ!」
「嘘よ!」
「嘘じゃねぇ!お前がさっき見たのは、俺が柱にもたれて、寝ていた隙にナースのやつが勝手にくっついてきただけだ!」
俺はお前を裏切ってなんかいない、と力強くはっきりと言うエースにハルは聞きたくない、と塞いでいた耳から手を放し、涙で潤んでいる目をエースに向ける。
目に映ったエースは真剣な眼差しで、真っ直ぐハルを見つめ返していた。
「だから俺を信じろ」
「エース…」
「…ハル、愛してる」
チュッ
「んっ…ふ、ぅ…」
「俺にはお前だけだ」
「んんっ…ふぅ…っ、はぁ…」
ハルはエースからの甘く深いキスに段々と酔しれていき、エースに抱き付く。
「おい。俺の存在を忘れんじゃねぇよい」
「「あ」」
「あ、じゃねぇよい!はぁ…全く、人騒がせな奴らだよい」
マルコは呆れ顔で額に手のひらを当てて、溜め息を漏らし、嫉妬は程々しろよい、と忠告をしてから二人に手を振って船内へ戻って行った。
「…エース。ごめんなさい」
「いや、俺も悪かった」
「んっ…あっ、はぁ…」
「傷付けて、悪かった」
「んんっ、ふっ…私も、ごめ…っう」
「でも、野郎共と楽しそうにしてたのは許さねぇ」
「えっ?」
「俺のいないところで、あんま笑うんじゃねぇ」
「ええ!駄目なの!?」
「あたりめぇだ!ハルは俺のもんだ!野郎共にお前の笑顔見せて堪るか!」
「………」
「なんだよ」
「エース、もしかして…ヤキモチ妬いて?」
「っ!わりぃかよ!」
「ううん!すっごく嬉しいよ!」
「あっそ」
「エースにこんなに好きになってもらって、私って幸せ者だね!」
ハルは顔を赤くしながら照れ笑いをエースにして見せた。
そんなハルが可愛くて、エースはハルを更に強く抱きしめ、首筋に唇を這わせて、紅い痕を残していく。
「んっ…つうっ…え、エース」
「やっぱ許さねぇ。お仕置きだ」
そう言ってエースはハルの胸を服の上から強く揉み、もう片方でお尻を撫で回し、唇はハルの唇へと合わせた。
「あっ…んぅっ…はぁんっ!あっ、はぁ」
チュッチュッ
「んぅっあ、はぁっ…ぁん…んん」
チュッチュッチュッ
モミモミ
サワサワ
チュッチュッ
「ん、やぁん…っう…はぁっあっ」
「ハル…」
「ぁ、っつ…ふぅんっ」
「愛してる…」
ハルはエースにそのままたっぷりと愛され、二人の絆は深まった。
END