SHORT
□寝顔
1ページ/1ページ
「ロー?」
ある穏やかな昼下がり。
昼食後のまったりとした時間に、ハート海賊団唯一の女性クルーであるハルが船長であり恋人でもある、ローを探して船内を歩き回っていた。
「ロー?どこ?」
ハルの手には何冊かの雑誌が積まれていて、どうやらそれらをローと一緒に見ようと思っていたようだ。
ハルは色々なドアを開けて中を見渡してローを探している。
船内を探し回った後は最後に残った甲板を探すことにした。
甲板に出てみると潮風が気持ち良くて、たくさんのクルー達が涼みながらトランプや花札をしたりして遊んでいる。
「ハルどうしたの?」
「あ、ベポ!ロー知らない?」
「キャプテン?キャプテンならそこで寝てるよ」
ベポが指差す場所を見ると、手すりと積み荷の間で長い足を組ながら気持ち良さそうに寝ているローがいた。
ずっと探していた本人がいて、ハルは安堵に顔が緩んでいく。
それをベポに指摘され、意識して引き締めるが、やはり好きな人に会えた喜びの方が勝ってしまい、ゆるゆると緩んでいく。
ローを起こさないようにゆっくりとした足取りで近づき、その隣で腰をおろした。
「ロー…」
愛しい人の名前を呼ぶ。
睫毛が長く、目の下の隈、不健康な肌の色、どれもが可愛く見える。
「ふふっ。ロー可愛い」
ハルは調子にのり、ローの頬っぺたや鼻、唇をツンツンして遊び始めた。
「ふふっ」
「………」
「柔らかーい」
「………」
ハルは目の前のローをツンツンする事に夢中になっていて、実はローが起きてしまった事に気づいていなかった。
「……おい」
「えっ?きゃあ」
いきなり腕を引かれ、ハルがローを押し倒す形になっていた。
「何してる?」
「えっとぉ…」
体勢を整えようとしてもがくが、ローの力には到底敵わない。
「俺の顔はそんなに面白いか?」
ニヤリとニヒルな笑みを浮かべて言うローからは不穏な影しか見えず、ハルは引きつり顔になる。
「ほら、もっと触れよ」
「も、もう十分!」
慌て拒否すれば、ローは少し拗ねたような顔になった。
ローが拗ねた表情をするのは非常に珍しく、その子供っぽいローにハルは愛しさが沸いてくる。
「ふふっ。ロー拗ねてるの?」
笑って言うと、ローは更に拗ね、そっぽを向いた。
「可愛いー」
再びツンツンと頬っぺたをつついて言う。
「お前の方が可愛いだろ」
「きゃっ」
体勢を反転させられ、今度はハルがローに押し倒された。
「たっぷり可愛がってやるよ」
「えっ、ちょっ…んっ」
昼下がりの甲板で、クルー達がいる中を全く気にしないで深いキスを贈ってきたローに、ハルは肩を力の限り押し返す。
ハルの抵抗にローはしぶしぶ唇を放す。
「…なんだよ」
「ここじゃ、いやっ」
頬を赤く染めて目を反らして言うハルに、ローは堪らなく愛しさを感じた。
「部屋行くぞ」
直ぐ様ハルを抱き上げて船内に入って行ったローとハルをクルー達は呆れ顔で見守っていた。
甘い一時をお互い楽しんだ後、目が覚めたハルは隣で気持ち良さそうに寝ているローの寝顔を眺めて、微笑んだ。
「ふふっ。やっぱり可愛い…」
そう言って幸せな表情で再び眠りについた……
END