SHORT
□あなただけ
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私の彼氏はキッド海賊団の船長さんです。
顔はイカツイし、よく怒鳴るし怖いけど本当は優しいって知ってるの。
私が食堂で雑誌読みながら寝てしまった時とか、普段は乱暴な動作なのに私を起こさないようにって壊れ物を扱うかのように優しい手つきで部屋まで運んでくれます。
多分敵船から押収した宝物よりも大事に扱われてる気がする。
って、これじゃあ完全にノロケだね(笑)
そんな優しい優しいキッドにもちょっと困った事があるの。
最初の頃はそんなに私が好きなんだ〜って嬉しかったけど、さすがに毎回こうだと不満になってくる。
「ねぇキラー。医療道具がきれちゃったんだけど、倉庫の高い位置に予備があって私じゃ椅子を使っても届かないの。悪いんだけど、キラー取ってもらえないかな?」
昨日の戦闘で負傷したクルーの手当てをしたら包帯やガーゼが切れたんで倉庫に取りに来たのは良いけど、誰が置いたんだか一番上に予備があった。
椅子を使っても届かなかったから、たまたま近くを通りかかったキラーにお願いして取ってもらう。
キラーはいつも文句なく手伝ってくれるから有り難いの。
今も仮面で顔は見えないけどちゃんと取ってくれたし、また必要になった時の為にって予備具の位置を私が届く範囲に全て移動してくれた。
「ありがとう〜キラー」
本当にキラーって優しいよね〜。
強くて優しいなんて最高だよキラー!
「わざわざ移動までしてもらって…本当にありがとうね」
「問題ない」
一言だけ言ってスタスタと出口に向かうキラーはクールだよね。
そんな事を思いながらキラーの後ろ姿を見ていたら、キラーが出口を出る前にキッドがやって来た。
「…何やってんだ」
「あ、キッド」
何故か不機嫌オーラを出してるキッド。
「ハルが必要な医療道具が高い位置にあって届かないって言ったから取ってやっただけだ」
ちなみに残りの移動もしてやった、と律儀にキッドに報告するキラーはやっぱりキッドを慕ってるのかな?
「そうか…」
それでも納得いかないようなキッドの顔。
「おいハル」
「ん?」
「ちょっと来い!」
そう言っていきなり手を引っ張って歩き出すキッド。
私は手に持っている医療具を落とさないように必死に抱えてキッドのスピードについていく。
もう、早すぎるよキッド…
そんな私にお構い無しにキッドはズンズン先に進む。
私は途中で横をすり抜けたキラーにもう一度お礼を言ってからキッドと二人倉庫を後にした。
どこに向かってるのかな?
取り敢えず医務室に荷物置きたいな〜と思ってたらキッドは医務室に入って行った。
「キッド怪我でもしたの?大丈夫?」
滅多に怪我なんてしないキッドだから医務室に来るなんて余計に心配になる。
「…ちげぇ」
「じゃ、何?」
私がそう尋ねるとキッドは少し怒った顔を向けて来た。
「…男と二人であんなとこに居るんじゃねぇよ」
「え…」
グイッと腕を引っ張られてキッドの厚い胸板に顔がぶつかる。
「もし何かあったらどうすんだバカ」
不機嫌な瞳のまま言うキッドを可愛いって思う私は重症だね。
でも毎回こんなヤキモチやくキッドに少し困ってるのも事実なんだけど、やっぱり嬉しいって思う私はもう救いようがないのかも。
「キッド、キラーにヤキモチ?」
「ばっ!ざけんじゃねぇよ!」
ふふふ。キッド顔が頭と同じ色になってるよ。
そんなキッドが私は大好きだな〜って思うの。
いつも強気で強引なキッドが子供の様に口を尖らせて拗ねる姿も愛しいの。
あーあ。
私はもう真っ赤な彼氏にハマりにハマってます!
前言撤回!
キッドに嫉妬されて困ってるなんて嘘。
本当は毎回毎回嬉しくて幸せなんだ。
不器用なキッドに愛されてる証拠だもの。
そんなキッドに私もちゃんと伝えなきゃね!
「キッド…私にはあなただけだよ」
そう耳元で囁いて軽くて甘いキスを1つ贈りました。
いつもいつまでも私にはキッドだけ。
最愛の人は髪も顔も真っ赤な人でしたーーー。
END