SHORT

□イライラします
1ページ/1ページ








「どうしたんだハル」

「え、何が?」

昼食を取りに食堂に入るなり先にご飯を食べているキラーと目があい、いきなり言われた言葉。

そのキラーの言葉にキッドも振り向いて私を見る。

「何かあったのか?」

「別に何もないけど」

「顔色悪いぞ」

「何だ寝不足か?」

キッドもキラーもうるさいなぁ。

別に無いって言ってるのに詮索とかしてほしくないんですけど!

特に今回は絶対に言いたくないし。

誰が好きこのんで月イチの女子日を彼氏に知らせるかっつーの!

あ〜やっぱり女子日だからかお腹空いてるからかイライラするわ。

未だに不思議そうに見てくる二人を無視してカウンターに昼食を取りに行った。

後ろでキッドが無視かってキレてるのが聞こえるけどこれも丸無視。

うるせぇんだよ!

イライラにイライラが募っていく。

「ちょっと、静かに昼食ぐらい食べれないの?」

そう言ってやるとキッドは渋々だが静かになった。

周りでクルー達が「お頭にあんな口きけるのってハルさんしかいねぇよな」とか言ってるのが聞こえる。

「お前、何か怒ってんのか?」

黙々と今日の昼食のカレーを食べている私をキッドがチラチラ見ながら言う。

親に怒られた子供の様なキッドがいつもなら可愛く思えるだろうが今日は違う。

うっとーしーことこの上ない。

今は正直構わないで欲しいんだよ。

だって話すのも疲れるくらい憂鬱で体がダルいんだもん。

キッドの質問には答えず無意識に出た溜め息にキッドもキラーも反応して体がビクッとなってた。

「おいキッド。お前何かしたんじゃないか?」

「は?そんなの俺が聞きてぇよ」

コソコソ話しても聞こえんだよ!

だって隣の席ですから。

「別にキッドが何かしたわけじゃないから、気にしないで私の事は暫く放っておいて」

あまりにコソコソうるさいから遂に言った。

でもダルい中の言葉だった為か冷たい感じになってしまったのはまずかったと思う。

ほら、二人とも固まってるよ…

うーん、何て言うか…八つ当たりしてごめんね?

でも自分でも押さえられないくらいイライラするの。

なんか腰は重いしさ。

取り敢えずご飯食べ終わったらこの前島で買っておいた痛み止めを飲んで部屋で大人しく寝ていようかな。

うん、そうしよ。

そう決めてからは側で固まったままの二人を無視して急いでカレーを完食した。

トレーを流しに置いてから食堂を出る。

私が食堂を出る直前ぐらいにやっと意識を取り戻した二人は再びコソコソと何か話しているけど、これ以上二人に八つ当たりしたら駄目だから自室へと急いだ。










コンコン

ベッドに寝そべって雑誌を読んでいたらノックが聞こえた。

起き上がるのも面倒くさいから寝たままドアに向かって声をかける。

「誰?」

「……俺だ」

「キッド?」

いつもはノックなんてしないでズカズカと部屋に入って来るキッドが今日は珍しくノックしてる。

どうぞと言ったらゆっくりとドアが開いた。

ドアを少し開けた隙間からキッドはおずおずと中を伺っている。

「どうしたの、入らないの?」

雑誌に再び目を戻して言うとやっとキッドは中に入って来た。

「………」

「………」

「………」

「……何か用じゃないの?」

そこでやっと雑誌からキッドへ目を向ける。

キッドを見るとキッドは眉間に皺を寄せて何とも言えない顔をしていた。

「………」

「キッド?」

「……俺は」

「ん?」

「俺は知らねぇうちにお前を怒らせる様な事したか?」

バツの悪そうな顔で頭をがしがしかきむしるキッド。

食堂でのキラーの言葉を思い出す。

ずっと悩んでいたのだろうか?

キッドのせいじゃないのに。

何だか目の前のキッドを見てると申し訳ない気持ちで胸がいっぱいになる。

「キッドは何も悪く無いよ」

「じゃあ何で」

「あ〜。……じ、実は、今ちょっと体調悪くて、さ」

「あ?大丈夫なのかよ?」

「うん。ダルいだけ」

「…そうか」

理由を聞いて少し安心した様子のキッド。

八つ当たりしたり悩ませたりしちゃってキッドに悪いことしたな…

「…キッド。体調悪いからってキッドやキラーに八つ当たりしちゃってごめんね」

俯いて言うとキッドがベッドへ近づいてくる。

私も起き上がってベッドに腰掛けると隣にキッドも座った。

向き合う形でキッドと見つめ合う。

「お前が体調わりぃの気付いてやれなくてすまねぇ…」

ポンポンと大きな手で頭を撫でられると胸が温かくなって何だか泣きたくなってきた。

うっすら目に涙を溜める私に気付いたキッドは慌て始める。

「お、おいハル。体辛ぇのか?だったらさっさと寝てろ!」

そう言って私を押し倒して布団を首までしっかりかけるキッド。

あまりに必死なキッドにクスリと笑ったら不思議そうな顔で見つめられた。

「ぁ、ごめんね。でも今はそんなに辛くないから大丈夫だよ」

「だ、だけどお前…」

「ふふ。キッドに頭撫でられて何だか胸が温かくなって、泣きたくなっちゃっただけ」

笑ってキッドに言うと思い切り抱き締められた。

「辛い時はちゃんと言え。俺がずっと側に居てやるから、俺を頼れ」

ギュッと抱き締められた体からキッドの熱が染み渡ってゆく。

再び目頭が熱くなったから私もキッドの背中に腕を回して抱き着いた。

「じゃあキッド…今日はずっと一緒にいてくれる?」

ちょっと甘えた声で聞いてみると真っ赤になったキッドの顔が迫って来た。

そのまま私達の唇が重なり、次第に甘く深いものになる。

「んっ…はぁ」

「ハル…」

熱い瞳で見つめられると頭がぽーっとしてくる。

そんな時、太ももに違和感を感じた。

「え、あっ、ちょっ、キッド。駄目!駄目駄目!今日は…」

「あ?何でだよ。良いじゃねぇか。お前の体に負担かけねぇ様にするからよ」

そう言ってそのまま手を太ももに這わすキッドに今度は私が焦ってしまう。

両手で必死にキッドの体を押してもビクともしない。

そうしている間にもいやらしい手つきでどんどん上に上がって来ていた。

「んんっ、キッド!今日は、やぁっ!」

思いっきり叫ぶ様に言うとやっとキッドの動きが止まった。

でも何だか不機嫌?

いや、でもさすがに今日は無理!

「……俺とするのがそんなに嫌か」

え?

なんかまた違う方向へ向かってるキッド。

ん〜もう!

これだけは言いたくなかったのにぃぃ!

両手でキッドの顔を掴んでしっかりと目を合わせて言う。

「今日は…女子の日なの!だから駄目なの!」

「あ?」

「〜ッだから!今日は生理だって言ってんの!」

そこまで言うとキッドはキョトンとしていたが、やがて理解したのかみるみる顔が赤く染まっていく。

こりゃあ髪の毛と顔の境目がわからないよ。

「ッ!あ、わ、わりぃ!」

慌てて私から離れたキッド。

さっきまでのキッドの温もりが一気に冷えた気がする。

「あ、じゃあ俺はこれで…」

部屋を出て行こうとするキッドを引き留めた。

「…今日は、ずっと一緒に居てくれるんじゃないの?」

布団に目線を落として言うとキッドから盛大な溜め息が漏れた。

「ったく。仕方ねぇな」

ぶっきらぼうに言うけどその顔はやっぱり真っ赤なままで、それがとても可愛く感じた。

再びベッドの側に来たキッドは近くの椅子を持って来て座る。

「おら、側に居てやるからさっさと寝て治せ」

「いや、こればっかりは時間の問題だし」

「うるせぇな。まだ顔色わりぃんだよ。さっさと寝ろ」

「…はぁい」

せっせと布団を被せてくるキッドに逆らわずに寝る事にする。

ぼんやりとキッドを見つめていると、キッドに手を握られた。

うん、やっぱり暖かいや。

自然と顔が綻ぶ。

「ニヤニヤすんな」

そっぽを向いて言うキッドがとても愛しい。

イライラしてた気持ちが今は嘘みたいに穏やかだ。

それもこれもキッドのこの温もりのお陰かな?

「おやすみなさいキッド…」

温かさからうとうとし始め、キッドのくれた額のキスを最後に私は夢の世界へと旅立った。

「全く…とんだ人騒がせなヤローだぜ」

そうキッドが呟いて唇にキスをくれた事を私知らないのだったーーー。











END

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ