SHORT
□だって可愛いんだもん!
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食堂を出てから部屋に戻り、ハルはベッドに倒れ込んだ。
(私は不要なら出ていかなきゃ…)
頭の中ではこの言葉がぐるぐる回っていて、ハルは他に何も考える事が出来なくなっていた。
(はぁ…出ていきたくなんて無いし、ずっとシャンクスの隣にいたい。でもそれは私のわがままで、シャンクスは私を不要としている。なら、私の出すべき答えは1つしか無いじゃない…)
ハルはベッドから降りてタンスから鞄を取りだし、クローゼットから自分の洋服を全て取り出して無造作に鞄の中に詰め込んだ。
他にも化粧品や洗面用具など、この部屋にある全ての自分の持ち物をたくさんの大きな鞄に詰め込んで、部屋を出た。
残っているクルーが少ない事もあり、誰にも会わずに甲板へと出れて、更には船を降りることも出来た。
ハルは薄暗くなった道を少し歩いてから船を振り返り、今までの感謝の気持ちを込めてお辞儀をしてからまた街の明かりを目指して歩き出した。
暫く歩くと街に着き、賑わっている人混みをかき分けながら、宿屋にたどり着く。
受付を済ませてからエレベーターで部屋に行き、大量の荷物を投げ捨て、ベッドにダイブ。
外では行き交う人々が楽しそうに会話をしているのが聞こえる。
ハルは再び込み上げて来た涙でシーツを濡らし、時間が経つのも構わず、ただ泣き付いていた。
ーーー翌日ーーー
シャンクスは朝ごはんの時間に食堂に顔を出した。
残っていたクルー達がシャンクスに挨拶してくるが、それらを適当にかわして、キョロキョロと食堂を見渡し、ハルを探す。
そんなシャンクスに気付き、料理長の##NAME2##が声をかけてきた。
「おはよーっす頭!ハルならまだ来てねぇぜ」
「ああ、おはよ。って、なんでハル来てねぇんだ?どこ行ったんだよ?」
「部屋に居なかったんすか?」
「ああ」
「そうっすか。なら船内のどこかにいるんじゃねぇすか?」
「ちょっと探してくるわ」
シャンクスは##NAME2##に手を上げて食堂を出ていった。
まずは船尾に向かったが、ハルは居なく、次は甲板に出てみたがここにも居ない。
部屋に戻っているのかと思い、自室に行くが、ハルの姿はなかった。
シャンクスはベッドに横になって少し休憩しようとしたら、自信から香るキツイ香水の匂いに気付き、風呂に入ろうと、起き上がってクローゼットを開いた。
その時…!
「!」
クローゼットの半分以上スペースが出来ている。
それは勿論、そこにあったはずの大量のハルの服が全て無くなっているからだ。
その事に気付いたシャンクスは他にも部屋からハルの所持品が全て消えている事を知り、慌ててベンの部屋に駆け込んだ。
バンッ!
「ベン!大変だ!」
「なんだお頭、騒がしい」
「た、大変なんだ!ハルが居ねぇ!荷物も全て無くなってやがる!」
「何?本当か?…遂に家出か」
「うっ…」
「誰かさんが毎回朝帰りしてくるから遂に家出したんだろ」
「っ!」
「毎回倉庫で1人泣いていたからな。もうお頭の側にいるのが辛くなったんだろ」
「………」
「痛い目、みたな」
フッ、と笑うベンにシャンクスは更に自己嫌悪に陥る。
そんなシャンクスに気付かないふりをしてベンは部屋を出ていった。
「…っ!俺は、大馬鹿者だっ!」
シャンクスは壁に拳を打ち付けてから部屋を飛び出した。
向かうは街。
お店が開店し始める通りを走り抜ける。
(ハル…すまねぇ…!)
自分の行動を悔やみ、唇を噛み締め、地面を蹴る力も強くなる。
シャンクスは宿舎の建ち並ぶ通りに着くと、片っ端から聴き込みを開始した。
(はぁ…!やっと、見つけた…!)
あれからシャンクスは三時間かけて聴き込みをした結果、やっとハルが泊まっている宿にたどり着き、ハルの居場所を突き止めた。
逸る気持ちを抑えてエレベーターでハルの部屋のある階まで行く。
フロントに事情を話、受け取ったキーの番号と同じ部屋を探して進む。
すると、角部屋より2つ程手前の部屋が一致した。
(あった!)
シャンクスは遂に走って駆け寄り、キーで中に入る。
直ぐ前にあるテレビの横には、投げ出したままになっている、見知ったハルの大きな鞄と靴があり、更に中に進んでベッドを見ると、うつ伏せで顔を横に向けて寝ているハルを発見した。
「ハル…」
シャンクスはハルに近づき、頬に触れようとした時、ハルの頬が湿っているのに気付いた。
「………」
シャンクスは伸ばしていた手を握りしめるが、再び手を開いてハルの頬を優しく撫でた。
涙で濡れている目も、親指で拭ってやり、前髪から覗く額にキスを落とし、頭を撫でる。
「…本当に、悪かった…ハル…!」
自分の勝手な行動で、辛い思いをさせた事を悔やみ、ハルの髪をすきながら謝罪するシャンクスだが、夢の中にいるハルには伝わるわけはなく、部屋にはハルの寝息としか聞こえない。
「ハル、愛してる…」
そう言ってシャンクスはハルの唇にキスをし、ハルを起こさぬように自分も布団の中に潜り込み、ハルを抱き締めて眠りについた。
「ん…」
昼前になると、ハルはカーテンの隙間から射し込む日差しが丁度顔に当たり、眩しくて起きた。
「え…!?」
起き上がろうと体を動かしてみるが、何かに拘束されていて動けない。
それに、耳を澄ませなくても、顔の隣から息づかいまで聞こえている。
変質者か!と思い、ハルは勢いをつけてベッドから抜け出す。
そしてベッドを振り返ると、そこには信じられないものが寝ていた。