SHORT
□仕事も君も
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白髭海賊団は現在とある夏島へ停泊中であり、クルー達は各隊に与えられた任務を遂行している。
食料調達係、武器調達係、その他調達係、様々な情報収集係、海軍観察係そして船で留守番兼見張り係だ。
今回マルコ率いる1番隊は情報収集係で、朝から町へと散らばっていった。
マルコの彼女であるハルは白髭海賊団のナースである。
ナース達は不足している医療道具も調達係に任せているので島での仕事はほとんど無く、毎回派手に着飾って観光やショッピングを楽しんでいるのだ。
今日もいつもの様にハルはナースのお姉さま方と島でショッピングしていた。
「ねぇねぇ、ハルちゃん」
「はい?」
「このネックレスとあのピアス、どっちが似合うと思う?」
「私のはこの服とこのスカート似合うかしら?」
「ねぇ、このピンクとあのピンクどっちが良いと思う?」
「え〜…」
先ほどから何度も何度もこの繰り返しで、毎回の事ながらハルは疲れてきた。
とりあえずお姉さま方の質問に的確に返事をしながら、自分も店内を見てまわる。
しかし洋服は似た様なものを前の島で買っているし、ネックレスも気に入ったものがなく、なんとなく退屈に思えてきた。
そんな時もお姉さま方はキャッキャしながら楽しそうに選んでいる。
店員を呼んでオススメを聞いたり、素材を聞いたりとかなり熱心にショッピングをしている姿を見ると、あ〜本当に女はショッピングが好きだな〜と思ってしまうのは仕方ないだろう。
ハルはそう思いながら、店の入り口の外にあるベンチに腰掛けながら時間を潰すことにし、ナースのお姉さま方に一言言って外へでた。
すると遠くの建物からマルコと2人のクルーが出てきて、そのまま真っ直ぐ道を進んで来る。
ハルとの距離が近くなったところで、マルコはハルに気付いて近寄ってきた。
「よぉ、ハルじゃねぇかよい」
「マルコ。仕事お疲れ様」
「あ、じゃあマルコ隊長残りは俺がやっときますんで」
「ああ。わりぃな」
「いえ。それじゃあハルさんもまた…」
「あ、はい…なんかすみません」
ぺこりと頭を下げてから二人から離れていくクルーを見送ってからマルコは話し出した。
「さて。仕事なくなっちまって暇だよい」
さっきまでハルが座っていたベンチにマルコは座ってハルを見上げて言う。
その顔はニヤリと少し意地悪な顔だ。
いつもは真面目でエースをはじめ様々なクルーのお世話をしているマルコだが、今のマルコはどこか楽しそうで子供っぽい。
「俺暇なんだがハルは忙しいか?」
そんなことわかりきっているはずだがマルコはニヤニヤしながらハルに聞く。
「もう…分かってるくせに」
「はははっ。お前から聞きたいんだよい」
「…何か今日のマルコ意地悪」
「ハルの前だけな」
無邪気な笑みを浮かべるマルコにハルは胸がときめいたのを感じる。
「私も、暇だから…マルコと一緒にいたい」
言ううちに赤面していくハルにマルコは満足気に笑ってハルの頬に手を添えた。
「俺もハルと一緒にいたいよい」
「マルコ…」
「ハル…」
ベンチに座って見つめ合う二人の距離が次第に近くなっていき、後数ミリで互いの唇が重なる。
「「「「ゴホン!」」」」
後僅かと言うところで後ろから不自然な声が聞こえた。
「ちょっとマルコ隊長〜?」
「ここは大通りなんですけどぉ」
「イチャつくなら他でしてくださいよ」
「あらまぁ、ハルちゃんも大胆ね」
口々に言うナース達にマルコとハルは焦る。
「あ、いや。これは…」
「あら、良いの良いの」
「そうよハルちゃん。あなたずっと寂しかったでしょ?」
「え…何言ってるんですか御姉様方」
「もう〜マルコ隊長がハルちゃんを放っておくからぁ」
「そうですよ、ハルちゃんずっと寂しそうだったんですから」
ナース達はハルに構うことなく呆然としているマルコに次々不満を言い始めた。
「大体、いつもいつも仕事で彼女をほったらかしにするなんて彼氏失格ですよ」
「そぉよ〜マルコ隊長はハルちゃんが可愛くないんですかぁ?」
「え、いや。そんな事はねぇよい」
「だったらもう少しハルちゃんとの時間作る努力してください」
「そうですよ!別にマルコ隊長がやらなくても良い仕事は1番遊んでるエース隊長とかにやらせれば良いんです」
「エースに任せたら後が大変だから…」
「「「「ちょっと!」」」」
マルコの反論にナース達は口を揃えた。
「先の事ばかり考えてると目の前の事を見逃しますよ」
「マルコ隊長がこんなにヘタレだったなんて」
「ハルちゃん〜もぉマルコ隊長はヤメテ他に素敵な人探したらぁ?私が合コンでもセッティングしよぉか?」
「そうよハルちゃん。世の中にはマルコ隊長なんて目じゃないくらい良い男がいっぱいいるわ」
二人はマルコに避難の眼差しを向けて言葉を発し、もう二人はハルに目を輝かせて他の男を薦めている。
「っ!俺はハルじゃなきゃ駄目だよい!」
「え、マルコ…」
ガシっとハルの肩を抱き寄せてナース達に向かって言うマルコの顔は真っ赤になっている。
こんなマルコの顔はハルに告白してきた時以来で、その時はハルしかいなかった為ナース達は初めて見るマルコの顔に呆然としていた。
「だ、だからハルには他の男は薦めるんじゃねぇよい。ハルは俺が幸せにする」
真っ赤でも肩を抱く力は強く、真剣な眼差しからマルコの言葉が嘘では無いことがわかる。
そんなマルコにハルの頬も赤みを増していく。
「はぁ…だったら最初から大切にしなさいよ」
「そぉよ〜」
「次ハルちゃんを悲しませたら船長にチクります」
「マルコ隊長を長期出張に出すように船長に言いますからね」
言葉は優しくは無いが、ナース達の顔は優しい。
ナース達が二人の事をどれだけ思っていたのかがわかる。
「ああ。もうハルを寂しくさせないよい」
さっきとは違って優しい笑みでハルを見下ろすマルコ。
ハルも笑顔でマルコの胸にすりよる。
そんな可愛らしいハルをギュッと抱き締めてマルコはナース達に向かって言った。
「じゃあ悪いけどハルは貰ってくよい。あっちにエースとサッチが居たからあいつらを荷物持ちに使え」
「「「「了解でーす!」」」」
マルコに元気な返事をしてからナース達は、両手いっぱいに買い物袋を持ってエース達がいると言う場所に向かって歩いて行った。
そんなナース達の後ろ姿を確認してからマルコは腕の力を弱めてハルの顔を覗き込む。
「ハル…悪かったない」
「ううん…マルコの気持ち嬉しかった」
「そうか。じゃ、埋め合わせってわけじゃねぇけど、これから今までの分たっぷり楽しもうぜ」
「うん!」
満面の笑みで返事をするハルに、不意討ちで軽くキスをしてからマルコはハルの腰を抱きながら歩き出した。
「〜っ!」
赤面するハルを横目で見ながら微笑を浮かべるマルコの顔は仕事をしているときよりも数段と素敵で、ハルはチラチラ見ながら幸せを感じた。
「ハル、ずっと離さねぇよい…」
真っ直ぐ前を見て言うマルコにハルは再び赤面するしかなかった。
##applause##
オマケ
「あ、エース隊長!」
「んあ?」
「きゃーエース隊長!」
「何だよ?」
「「「「はい、これ!」」」」
「ん?何だよこれは…」
「「「「持ってv」」」」
屋台で肉にかぶりついていたエースはナース達の強引な態度に屈し、渋々彼女達の荷物持ちにされてしまった。
たまたまトイレに行って席を外していたサッチは戻って来た時に見たエースとナース達のやり取りから、足を翻して颯爽と町へ駆けて行ったのだった。
「エース、おめぇの分まで俺は楽しんでくるからよ!悪魔達の相手は任せたぜ」
END