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□未定:僕らの関係
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「安形ー!こっちこっち!」
「おぉ!・・・悪い遅くなった。」
「オレも今来たとこだよ。」


久しぶりに見た安形は、少し男前になったような。ま、オレには負けるけどさ。



□□□

「んじゃ、乾杯!」
「かんぱーい!」

「いやーしかしミチル変わってねーな!」
「そう?安形は少し変わったよね。」
「そーか?」
「うん、大人っぽくなった。」

かっこよくなった?なんてふざけて聞いてくる安形に、調子に乗るな、と昔のように返しながらも、オレは少し緊張していた。
オレ達、どんな風に会話してたんだっけ?

久しぶりに会う友人との距離感が分からなくて、自分にぎこちなさを感じる。
いつも一緒にいたのに、多分お互いに一番気を使わないで済む相手だったのに。変わってしまった関係性が少し淋しいけれど、一年も経ったんだから当たり前かと思うと諦めもつく。それほどまでに、この一年というのは長くて、あっという間だった。

そう。あの嵐のような賑やかな高校生活に別れを告げてから、一年も経ったんだ。
卒業の時点で予想はしていたけど、別々の大学に進んだオレ達はこの一年間で高校生の時に比べて随分と疎遠になっていた。
大学生活はなにかと忙しくて、時々メールのやりとりはしていたものの、会うのは本当に久しぶりのことだった。


そんなことを考えながら他愛もない話をしている間に、料理が次々と運ばれてくる。シーザーサラダに玉子焼き、若鶏の唐揚げと鉄板焼き。あっと言う間にテーブルの上は居酒屋の定番メニューで一杯になった。

「おほ、料理出てくんの早いな。さすが平日。」
「まだ時間も早いしね。」

手頃な値段設定の居酒屋の店内には、オレ達を含めて3組しか客がいない。今は閑散としているから良いけど、週末になればサラリーマンや学生で賑わって、それはそれは酒臭いんだろうな。考えただけでもぞっとしてしまう。
相変わらずアルコールを受け付けないオレは、乾杯からウーロン茶とお友達だけど、安形は玉子焼きをつつきながらジョッキグラスを呷っている。
まだ未成年だなんて、そんなことは気にしちゃいけない。なんてったって大学生なんだからさ。

「ところで安形、大学はどう?楽しい?」
「んー?ま、悪かねーよ。」

安形の大学生活って正直全く想像つかないんだけど、それなりに楽しくやっているらしい。新しい友人やゼミのことをポツポツと話してくれた安形に「楽しそうで良かったよ。」と言ってやる。

「でもなぁ、」
「?」

「ミチルがいたら、もっと楽しかったかもな。」


「・・・へ、へぇ。そっか。」

いきなり真顔でなんてこと言い出すんだこの男。もう酔ってるのかと思ったけど、顔色を見る限り、どうやらまだシラフのようだ。

「なんだよー。お前は違うのかよ?」

え、すごい困るんだけどこの質問。酔ってる訳じゃないんだから尚更。
なにが困るって、その質問にオレがノーと言えないってこと!!

「なぁ、ミチル?」
「・・・ち、違わなくなくもない。」

あぁそうだよ悔しいけれど安形の言うとおりだよ!新しい友達はたくさん出来たしもちろんモテてるし大学生活は申し分ない。けれど、ふと思い出に引っ張られる時がある。安形のおかげで良くも悪くも騒々しかったあの日々を思い出しては、楽しかったなぁ、なんて。

「かっかっか!お前顔真っ赤。」
「・・・うるさいな。」
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