short

□元・拍手お礼
1ページ/1ページ



「絶対違う。」
「いや、だから違わないって。」


二人の声に、目を通していた書類から顔を上げた。
珍しく起きている会長が横に立っている榛葉さんのセーターを掴んでいて、なにやら穏やかではない雰囲気だ。

「見栄張るなって。」
「張ってないよ!・・・ったく、なんだよもう。」
真剣に問い詰める会長と面倒臭そうな榛葉さん、いつもとは真逆の二人の様子に、仕事をしてくださいと注意しそびれてしまった。
「椿ちゃん!ね、どう思う!?」
「え・・・。」
いや、どうって言われても、何について話しているのか分からないんですが。
「おい椿、こいつ絶対MじゃなくてSだと思わねえ?」

ああ、そういう話でしたか・・・ってええ!?
危なく納得しかけてしまった。この二人は生徒会室でなんて話をしているんだ!浅雛と丹生がここにいないからまだ良かったものを・・・。
大体、榛葉さんが、その・・・どんな趣味の人かなんて、
「しっ知りません!」
「ほら、あれが普通の反応だよ安形。大体さ、オレがMだって言ったらMなんだよ。」
榛葉さん・・・趣味にとやかく言うつもりはありませんが、昼間からそんなことを宣言しなくてもいいのではないかと思いますが。
なんだか気恥かしくて榛葉さんの顔が見られなくなってしまった。

「でもなんか合ってねーし。Sだって絶対。見りゃ分かる。」

合ってない?榛葉さんの顔なら別に良いと思いますが・・・いや、でも可愛い顔をして実はドSというのが良いのだと、昼休みに女子が騒いでいたな・・・。会長はそういうのが好みなのだろうか。
い、いやいや待て待て!なんで会長の好みと榛葉さんの嗜好が関係してくる!?
え!?ちょっと待て・・・ま、まさか・・・。

「まあ、たしかにSな時もあるにはあるけどさ、でも基本的にMなんだよ。」
いつもはMだけど、時々S!?
もう駄目だ、生徒会室でこんな話をされては生徒会執行部の沽券に関わる!!

「おおおお二人とも!!いい加減にしてください!!!」
「え?ちょ、椿ちゃん?なんか顔真っ赤だけど?」

「いや、大丈夫です。大丈夫ですが、生徒の規範であるべき生徒会執行部の人間が、そういった話を、あろうことか生徒会室で話すことには僕は反対です!!!」
「ええー??やけに気合い入ってるね椿ちゃん。」
そういう榛葉さんは、未だに会長にセーターを掴まれたままだ。

「かっかっか。堅いこと言うなよ椿。ただの男子生徒のよくある世間話じゃねーか。」
会長が、ニヤリと笑った。
「―――っっ!!人の趣味に口出す気はありませんが、そういった行為は人目につかないようにやって下さい!!学園の風紀が乱れます!!!僕は今日はこれで失礼します!!!」




□□□

「よく分かんないけど、椿ちゃん今日はやけに気合入ってたね。」
「あいつほどからかいがいのある奴はいねーからなー。」
「ん?なにが?ってか安形、いい加減セーター離せ、伸びる。」


「やっぱりMじゃでかいだろ。ダボダボじゃねーか。」
「しつこいなー。だから、これくらいで良いんだってば。それにSだと丈が短くて格好悪いんだよ。」

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ