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□700hit 迷子様より
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「…あ、」


気付いたら不良に絡まれてたとか、どんだけぼーっとしてんだ俺は。

多分、肩がぶつかっただとか、そんな単純な理由で今に至るのだろう。


「聞いてんのか!?」


明らかに話を聞いていない様子だったのだろう。痺れをきらした不良は、拳を固めて、後ろに引いた。


「聞いてんのかって言ってんだろ!!」

「…やばっ、!」


逃げもよけも出来ない。――殴られる!
数秒固まった後、バチン、と痛々しい音が鳴った。しかし痛みがこない。おかしい。


「大丈夫?藤崎」

「え…?あ、榛葉…さん、」

「けが、無い?にしても、なんで不良なんかに…」

「え、ちょ、ちょっと待ってくれよ」

「ん?」

「これ、お前が…?」


気付いたら不良は地面にのびている。顔には、少し赤い跡。

「あー…うん、そうだよ」

あり得ないと思った。こんな細い体で?嘘に決まってる。


「まぁここじゃなんだしさ、カフェかどこか行こう?」

「あ、はい…」


促されるままに、俺は近くのカフェへと入った。

おしゃれな雰囲気ただよう空間は、なんだか落ち着く雰囲気だ。



「あの…ありがとうございました」

「いやいやなんのなんの。それよりも、大丈夫?」

「あ、大丈夫っす。特に何もされなかったんで。」


「そっか、よかった。」


何というか、大人、だなぁ。
外見がよくて性格もよくて、完璧なんだな、改めて見ると。
こりゃもてるのも分かる。
気遣いができている。無意識のようにしている気遣い。


「…つうか、ビンタ、っすか?」

「あー…まぁ、そんなとこ?パンチの方がいいよね、やっぱ。」


まぁ男らしいと言えばパンチだ。しかし、この人はグーパンチとか、すんげぇ似合わなさそうだな、と思ってしまう。失礼だが。


「あ、そう言えば、学校でどっか怪我してなかった?」

「え?…あぁ、すり傷だし、舐めときゃ…」

「駄目だよ、菌が入っちゃう。」


めっ、とまるで赤ん坊を叱るような怒りかただった。


それから他愛もない話をして、あっという間に時間が過ぎた。


榛葉は俺のことを送ってくれた。なんだか反対なような気がしたが、失礼だと思い、言わなかった。


「じゃ、傷はなめちゃ駄目だよ!」


最後までそれかい。とついついツッコミを入れる。榛葉はあはは、と笑って、去ろうとした。


「あ、待って、」

「どうしたの?」


チュ。



頬に軽いキスをして、軽く礼を言った。


「やっと、あんたがモテる理由がわかりましたよ。」

「え…あっ…あり、ありがとう…?じゃ、じゃあね!おやすみ!」

「ありがとうございました、」


暗くてよくわからなかったが、きっと顔は真っ赤のだろうな。


俺は上機嫌でエレベーターに乗った。




      改めまして


好きなんだと実感した瞬間。

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