short
□死んでもいいわ
1ページ/1ページ
たまたま起きていた授業で面白い話を聞いた。
夕食の後に面白いテレビもやってなくて暇だった。
だからなんとなく、そう、なんとなく、だ。特に深い意味はない、断じて。
トゥルル、トゥルル・・・
3コール目、4コール目・・・よし次出なかったら切る。別に用がある訳でもねえんだし。
トゥル、「もしもし?」
出んのかよ!
「あ・・・あー、ミチルか?」
「そうだけど?どうしたの?」
「つ、」
「つ?」
なんだこれ、予想以上に緊張するぞ。
「つ、月が・・・綺麗ですね。」
「・・・ん?」
カーテンを開ける音がする。
「・・・ああ、本当だ。満月なんだね。それにしても安形意外とロマンチストだなー。わざわざそれを教えに電話してくれたんだ?」
「お前、意味分かって・・・いや、やっぱいーや。」
「??・・・でもありがとね。安形からの電話がなかったらオレこんな綺麗な満月に気付かずに寝てたかも!」
「そりゃ、良かった。・・・・・・・・・ところで、現国今日どこやった?」
「国語?まだ文法。安形んとこは?」
「『こころ』、夏目漱石の。」
「へー、じゃあオレらも来週それだ。うち1回分遅れてるらしいからさ。」
なるほどな。
「・・・そうか。んじゃ、また明日。」
「え?ああ、おやすみ。」
「おう。」
電話を切ってから、机に突っ伏した。なにやってんだ、俺。ミチルを照れさせて笑うつもりだったのに、これじゃ本当に月が綺麗ってことを知らせるためにわざわざ電話した野郎じゃねーか。俺は乙女かっつの。
あいつのクラスの授業がまだだったとは誤算だ。
・・・まあいい。現国の教師は全クラス同じだから、来週、今日の電話の意味が分かるだろ。
そん時に一人で教室で赤面しろミチル。
I love you.
(訳:月が綺麗ですね)
来週の今日は、恥ずかしがってなかなか生徒会室に来ないだろうミチル君を教室まで直々に迎えに行ってやるか。