short
□1000hit 迷子様より(2)
1ページ/1ページ
安→→→→←榛(ちょめすけ様)
「ミチル。好き、大好き。」
朝でも昼でも夕方でも、彼は榛葉に言い続けた。それは、もう耳にたこができるくらいに、だ。
今日も朝からその言葉を言われ、いつものようにはいはい、と促していた。
「なぁミチルぅ。お前俺の事嫌いなわけ?」
「何言ってんの安形。嫌いだったらとっくにキモイって言ってるけど?」
「だよなぁ……」
変なの、と榛葉は呟くと、手元にある書類を見ながら考えた。ちなみに二年生は校外学習でいない。本来なら生徒会はないものの、仕事が溜まっていたので(主に安形の)、生徒会室にいる。
確かに安形から榛葉に好きだ、とは言っても、榛葉から安形には滅多に言わない。
(そりゃ不安にもなるよなぁ……)
そう思うと、言ってあげたくなる。が。
照れくさいのだ。好きだなんて言えるわけがなく、言われただけで沸騰するかのように内心は煮えくり返っているのに。
「なあミチル。」
「なあ、に……?」
何時の間にか後ろに居た安形の方に振り返った。すぐ近くに安形の顔があり、がた、と椅子から落ちかける。
「好き。ミチル、大好き。……なあ、ミチルは?」
「え、……あ、」
そっと頬を撫でられ、顔をゆっくりと近づけられる。
キスされる。そう思った頃には唇はくっついていた。
しかし唇はすぐに離れ、安形は寂しそうな顔で榛葉に問う。
「……なあ、ミチル。」
「ん……?」
「……好き。」
「わか、ってるよ。わかってるから……」
そんな悲しそうな顔しないで、と笑いかける。しかし安形はまだ不安そうに眉をしかめている。
「だ、大丈夫。俺、ちゃんと安形のこと、その……」
「その?」
「す、すき、だから」
だから何と言うか、とごもごもと俯きがちに言葉を付け足す。
暫く沈黙が続いて、ちら、と榛葉が安形の方を見た。すると安形は急に榛葉に抱きついて、榛葉の肩にグリグリと自分の額を押し付けた。
「ミチル!ミチル可愛い!!何頬赤くしてんだよもう!あぁ可愛い!」
「えええ??!安形?」
「よかった。俺愛されてるわー」
「あ、当たり前だろ……」
だよな。
そう言って幸せそうに笑った安形を見て、榛葉まで幸せな気持ちになった。
「なあ、もう一回キスしていい?」
「んー……いいよ」
榛葉が微笑むと、安形は榛葉に抱きついてから、榛葉にキスをした。