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□未定:君への感情
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幸せにしたいやつは、いる・・・かあ。なんか安形、ほーんと大人になったな。

まだ濡れている髪をそのままに、ベッドに潜り込んで今日の会話を反芻する。


『幸せにしたいやつなら、いる。』
『それ、その子には?』
『・・・言えねーよ。言ったらきっと傷つける。』

『俺はな、そいつが幸せであれば、笑っていればそれで良いんだよ。それを隣で友達として見ていられれば良い。』


安形のくせに、かっこいいこと言っちゃってさー。というか、相手誰?高校の時はそんな素振りは一切なかったしな、やっぱり大学?
くっそー安形め、オレにはそんなこと一言も言ってなかったくせに!
なんで教えてくれなかったんだろ。ちょっと、寂しいな。
って、いやいや、それは別に良いんだけれども!

とりとめもないことを考えながら、ごろんと寝返りを打つ。湿った髪の毛が頬に被さってひんやりとするのが、気持ち良いような悪いような。
そう言えば電気が点いたままだと気付いたけれど、消すのも面倒くさい。疲れた身体はすでに寝る体勢に入っているのだから。気が付かなかったことにして瞼を閉じた。

ところであの安形があそこまでいうような子ってどんな子なんだろ?サーヤちゃんみたいな妹系かな?・・・それちょっと嫌だな、道徳的に。でも友達って言うくらいだから、サバサバした話しやすい子かも。なんだっけ、スケット団のあの女の子みたいに。
あーと、なんていったっけなーあの子。年中素足で、確か料理が上手で・・・それで、名前は・・・ああダメだ眠い。

考えるのを放棄して完全に寝る体勢に入れば、体が布団に沈み込んでいく感覚。

今日も楽しかったな。だいがくにいって、あがたとあって・・・

あがた、

安形、か。

嬉しいだろうなあ、何にも執着しなさそうなあの男が、あれほど真摯に自分に想いを寄せていたら。誰よりも自由な安形の心を、自分が独占できたら・・・。

いいなあ、
うらやましい、な。

どうしてオレじゃ、ないん・・・だろ。



「―――っっ!?!?」
いやいやいやちょっと待て!?オレ今何考えてた!?
微睡みの際でたどり着いた思考に、眠気なんて一気に吹っ飛んで飛び起きた。
ちょっと待て、落ち付けオレ・・・う、うらやましいって・・・何が?誰を?え、オレが安形を?いや違う、オレが・・・相手の女の子を?
なーいないない!落ち着け道流。胸に手を置いて深呼吸。うわあ嫌な汗・・・。

「まさか、ね。オレが、あ、安形のこと・・・好きだなんて。―――え?うそ、ははは、は。」

気のせいだと思いたくて敢えて口に出してみたのに、逆にすとん、と心に落ちてきて、まるで元からそこにあったかのように馴染んでしまった。今まで知らなかった自分の気持ちに、乾いた笑いしか出てこない。

だってまさか、このオレが―――自覚と同時に失恋だなんて!

とりあえず起き上がって、ベッドを背凭れにして床に座り込む。眠気なんて遥か彼方に行ってしまいましたよ。
とりあえず悩んだ時は安形に相談・・・と携帯に手を伸ばしたところで一時停止。馬鹿かオレは。今安形が出たところで、一体何を話すんだ。「もしもし安形ー。オレさー実は安形のこと好きらしくってさ。でもちょっと信じられないんだけど、どうしたら良いと思う?」って?

だめだ混乱している。そもそもオレって本当に安形のこと好きなの?それとも、仲の良い友達の“一番”じゃなくなってしまうのが嫌なだけ?・・・どちらにせよ若干凹むな。

さて、これからどうしようか。いずれにしても虚しい結果になることだけは明らかだ。一度気付いちゃったらもう無かったことには出来ないし、けど安形と距離を置くのはちょっと淋しいし。
ただ一つだけ確かなことは、こんな感情絶対に安形に知られてはいけないってこと。



あーあ、出来ればこんな感情、一生気付きたくなかったよ!
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