You are one of my…

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また、女の子に告白された。

安形を家まで送ったあと、オレは家に向かって歩いていた。いや、家まで送った、というと語弊があるかもしれない。安形の家はオレの通学路上にあるから。
あの日、放課後眠っていたところを起こしてもらって、その流れで一緒に帰るまで知らなかったことだけど。オレは今まで知らずのうちにクラスメイトの家の目の前を通って学校に通っていたらしい。なんで今まで鉢合わせなかったのかが不思議だ。
だから別に安形を送り届けたいわけじゃないんだけど都合上、家まで送った後に近くの女子校の制服を着た子に声をかけられた。
榛葉くん、と震える声でオレを呼び止めたその子は、清楚な感じでとても可愛らしかった。聞けば、道で何度かオレを見かけて、それで好きになってくれたらしい。
気持ちは嬉しいけど今は誰とも付き合う気はないからごめんね、と伝えると涙を抑えて去っていった。
よくあることなんだ。この顔に生まれたからには当然だとも思っている。毎回女の子たちには悪いけど慣れてしまった。
だけど今回は何故かすごく申し訳ないことをしたように感じて、そのことが頭から離れなかった。なにか、忘れている気がする。電気を消してベッドに入ってからもその罪悪感は続いて、なんでだろうと延々と考えていた。

(・・・榛葉くん)
(初めて見た時から・・・)
(・・・判ってたことだから)


―――あ、名前。

オレ、あの子の名前を知らないんだ。オレとしたことが、可哀想なことをしたなぁ。
思うに、名前ってのはとても大事だ。名前を知るってことは、きちんと相手を認識したってことになる。あの子は折角勇気を出してくれたのに、オレの中でたくさんの女の子のうちの一人のままだ。


「ごめんね。」


今更どうしようもないけど、名前も知らないあの子に改めて謝ってみる。伝わりやしないだろうけれど。
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