You are one of my…

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「お兄ちゃーん、今日午後から降水確率80%だってー。」
「・・・んー。」
駄目だすげー眠い、昨日ゲームに真剣になりすぎたな。今日学校サボっちまうか・・・。

テーブルに肘をついてぼーっとしていると、俺のコーヒーを持って妹の沙綾が近づいてきた。
「そういえばお兄ちゃんさ、最近榛葉さんと仲良いんでしょ?」
コーヒーを受け取り一口飲んだ。うまい、さすがは沙綾。
「お?なんだ、ミチルと知り合いか?」
「いや、知り合いじゃないけど・・・。あのね、お願いがあるの。」
上目づかいで聞いてくる我が妹は恐ろしく可愛い。けどな、お前そういうの外であんまやんなよ。お兄ちゃんは心配だ。
「あのね、友達が、榛葉さんのこと大好きで、どうしてもサイン欲しいんだって。でも直接頼むのは恥ずかしいらしくて・・・お兄ちゃん、榛葉さんにサイン頼んでもらえないかなあ?」
・・・危ねぇ、コーヒーふき出すところだった。
「いや・・・沙綾お前・・・。サインはないだろサインは。芸能人かあいつは。だいたいそんなんもらったって嬉しかねえだろ。」
「えー、榛葉さんのサイン欲しがってる子ってたくさんいるよー?例えばねぇ、まみちゃん、かなちー、斉藤さんにひとみちゃんとよしぴーもでしょ。あとひろこと、吉川君も欲しがってったっけ・・・。」
「わ、分かった分かった、サインな。頼んでみるよ。」
指折り友人の名前を挙げる妹を慌てて止める。サインを欲しがる気持ちは理解出来んが、ミチルが相当人気があるということは分かった。ってか男もいんのか・・・今更ながらすげえなあいつ。

「ちょっと二人ともー?のんびりしすぎよ!学校遅れるわよー!」

リビングからおふくろの声がした。壁にかかっている時計を見れば、もう8時を過ぎている。
「あっ本当だ!んじゃあお兄ちゃん、お願いね。」
「ちょっと待て沙綾、サインって何に書かせりゃいいんだ?」
「ああ、忘れてた。…これにお願いしますだって。」
「・・・。」
渡されたのは、やけに本格的な色紙だった。
もう何も言うまい。


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「ちょっと安形ーいつまで寝てんのさ。」
何者かに頭を叩かれた。地味に痛い。
目を開けると、ミチルの顔。相変わらずお前目でけーなおい。
「お前・・・もうちょっと優しい起こし方をだな・・・。」
「なに言ってんの。もう昼休みだよ。どう考えても寝すぎだろ。」
苦笑しながらミチルは一つ前の席に、俺と向き合う形で座った。
教室はざわざわと騒がしく、弁当やらパンやらの匂いが充満している。
「お?今日教室で食べんのか?」
「だって雨降りそうじゃん。」
促されるままに窓の外を見ると、確かにミチルの言う通りだった。今朝は青空が広がっていたような気がするが、今は灰色の雲が空を覆っている。風も強いようだ、校庭の木がしきりに揺れている。

ミチルはすでに昼食を食べ始めていた。昼食と言っても、菓子パン一つ。
「お前、そんだけで足りんの?」
パンを口にくわえたまま、ミチルは無言でうなずいた。
教室は相変わらず騒がしい。女子が雑誌を見ながらなにやら興奮している。
俺は弁当を取り出しながら言った。
「そんなんだからひょろひょろなんだよ。」
「いいだろ別にー。オレはこれくらいでちょうど良いんだよ。」
口を尖らしてミチルが言う。まあ確かに、この顔でマッチョだったらちょっと、いやかなりキツいものがあるか。
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