You are one of my…
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「ありがとう、安形。」
お礼を言って鞄を受け取ろうとしたが――。
「なあ、ミチル。」
「なに?」
伸ばしかけた手を戻す。
「お前最近、よく物なくしてないか?」
「・・・そ、うかもね。」
さすが安形、よく見ているなぁ。でもここは誤魔化しておきたい。何となく本当の事は言いづらい。
「でもまあ、気にするほどでもないよ。」
「しんどくねーの?」
まっすぐな眼で安形がオレに問いかける。目が、逸らせない。
本当のことを言えって、安形の眼が言っている。頭の良い安形のことだから気付いてるんだろう。
でもさすがに“重すぎる愛ゆえに誰かに物を持ってかれて困ってます”とは言いたくない。
「うん、まぁ・・・違うと言ったら嘘になる。」
「やっぱり・・・お前一回病院行け。」
「・・・はい?」
「そういうのは早い方が良いぞ。」
・・・?
駄目だ、なんで物を持ってかれて困っている人間が病院に行かなきゃいけないのか全然分かんない。あれか?ただの被害妄想だから精神科に行ってみろとでも?
「あ、あのね、一応言っとくけど、これは気のせいとかじゃないからな!」
「だから尚更だろ。」
「???」
お前なぁー・・・と腕組みして溜息をつかれた。
えええー、なにこの呆れた顔。何なのオレが悪いの?話についていけないオレが悪いの?
ぐっと顔を近づけて、安形はさらに真剣な顔でオレに言った。
「いいか、恥ずかしがって放っておくと取り返しのつかねえことになるぞ。それで後悔するのはお前だ。」
「う・・・うん。そう、だよね。」
確かに、色々エスカレートしちゃって大ごとになっても困る。結果として相手が辛い思いをするだろう。
「そうだ。この歳で物忘れをするってのはな、大抵が慢性硬膜下血腫や脳腫瘍とかの恐ろしい病気の兆候だ。後は若年性健忘症なんてものもあるが、いずれにせよ大ごとだぞ。だからミチル、早いとこ病院行って検査してもらってこい!!」
「なんでそうなる!?!?!?」
安形君はオレの予想をベリーロールで軽々と越えていきました。
「おわっ!なんだミチル急に笑い出して!大丈夫か!?やっぱ脳に何か・・・。」
「ごめんちょっと静かにしてくれないかな。」