You are one of my…

□5
1ページ/2ページ


俺は、普段の態度に問題があるのか基本的に教師には人気がない。けど、一部の教師には(ありがた迷惑ではあるが)目をかけられていたりもする。
なぜなら俺は頭が良いからだ。

「安形君。君、高校は決めたのかね?」
廊下で俺を呼びとめた若い数学教師の質問は、すでに聞き飽きたそれだった。

「や、まだ決めてねーす。」
「そうか。なら君、教育大附属はどうだ。ここらじゃ一番の難関校だが君なら無理ではないだろう。いやなに、実は私の母校でね、私もかつてはこの学校から教育大附属進学という功績をつくり出した生徒でね。ははは。どうだ、安形君なら私と同じような栄光の道を歩むことも可能だと思うのだが。どうだね。」

めんどくせ。ようするに、“俺が附属に行くことによって周りが褒め称える→便乗して自分の過去の栄光を再び”って算段だろ。
進学とか、正直どうでもいい。どこに行ったって、堅苦しい制服を着て、教師の言う通りに動いて、つまらねー授業を聞く、ということに変わりはないだろう。
どこに行ったって、退屈だ。

「周りから拍手喝采で感謝されるのは気持ち良いものだったぞ。なんせ教育大附属といったらエリート中のエリートだからな!」
聞いてもいないのにぺらぺらと話し続けるこの若い教師は、姿勢がやたら良い。なのになぜが卑屈に見えるのは、早口と顔色の悪さのせいか。
話の内容には微塵も興味が持はないが、堂々と掃除をサボれるからまぁいいかと思った矢先。

「あ、安形いた。掃除サボって何してんの・・・?」
後ろからミチルの呑気な声がした。俺が影になってこの小柄な教師が見えていないようだ。教師は不快そうに細い眉をひそめている。
「あー・・・。」
説明すんのめんどくせー・・・と思ってる間に、俺の肩越しに覗き込んだミチルは大体を把握したらしい。

「あ、清原先生。お話し中でしたかー、失礼しました。」

ミチルはへらっと笑って立ち去る。
はずだったが、教師(清原というらしい)がミチルを呼びとめ、早口でまくし立てた。
「待ちたまえ榛葉くん。全く、君はいつになったらその頭をきちんとしてくるんだね?周りを見てみなさい、そんな髪の生徒なんて一人もいないだろう。君みたいな生徒のおかげでこの学校の評価が下がるんだ!」

ミチルは俺と違って頭はそれほど良くないし、品行方正という訳でもない。それでも、自慢の顔と愛想の良さからか、教師受けは基本的に良い。
その反面、こいつを腐ったミカン扱いしている教師がいることもまた事実。ちゃらんぽらんな見た目、というか主に髪が原因だ。茶髪にパーマとくれば、規則に厳しい教師は気に食わないだろう。この清原がまさにそれだ。
当のミチルは困ったように笑っていた。
「だから先生、これは地毛なんですってば―。」
「そんな地毛があるわけないだろう!全く、受験生が何をチャラチャラやっているんだ!大体君はなんの用で・・・
まさか君たち友人なのか?」
清原が俺たちを見比べる。ミチルの手は俺の肩に乗ったままだ。

「安形君も一緒になって、何か悪さしてるんじゃないだろうね。」
そう言ってじろりと俺を見る。言い返そうと口を開いたが、先にミチルの言葉によって遮られえた。
「やだな、清原先生。安形は別に友達って訳じゃないですよー。ただ、勉強教えてもらおうかと思ってね。ほら、オレも受験生ですからね。」
と言って殊更笑みを深くする。いつの間にか手は離れていた。

・・・なに言ってんだ、こいつ。

「ふん、なら良いがね。彼の勉強の差し支えになるようなことはくれぐれもしないように。なにせ安形君はこの学校始まって以来の優秀な生徒なのだからな!」
「ふふ、分かってまぁーす。」

あ、駄目だ。すげー腹立った。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ