You are one of my…

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「うるせーよ。」


「・・・安形?」
「黙って聞いてりゃごちゃごちゃと。俺の成績の心配してくれなんていつ頼んだ?あんた俺の親父かってーの。俺が誰と一緒にいようが関係ねーだろ。」
「・・・なっ、安形君、私はただ君の将来をだね・・・。」
真面目に掃除している生徒が不思議そうにこっちを見てる。あとミチルの追っかけ連中も。

「まあ、確かに。友達じゃねえよな、ミチル。」

ミチルがぽかんと俺を見つめる。そのアホ面に笑って肩を組み、同じくアホ面している清原に向けて言ってやった。


「先生ー、俺達、親友なんでーす。」



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「安形さ、なんであんなこと言ったの?」
あんなこと、とは今日の掃除の時間のやり取りのことだろうな。
「んー、なんか腹立った。」
「そう。」
「言っとくがな、お前がちょっかいかけたくらいじゃ俺の成績は落ちねーぞ。」
「はは、確かにそうだね。」
「それとな、ミチル、俺はお前にも腹が立ってんだ。いいか、くだらねー嘘ついてごまかそうとすんなよ。」
「・・・なにが?」
「分かってんだろ。」

ふー、とミチルがため息をついた。さっきから頑なにこっちを見ない。こいつは不都合なことがあると絶対に目を合わせない。だから嘘もすぐ分かる。本人はバレてないと思っているらしいが。

「・・・安形のさ、内申とか受験とか考えたら、あの場はああやって言うのが一番かなって思ったんだ。」
「別に悪いことなんかしてねーんだから、堂々とすりゃ良いだろうが。」
「・・・。」
「ミチル?」
「なんて言うか・・・安形には敵わないなー。気を遣ったのがバカみたいだ。」
ミチルが楽しそうに笑った。


こいつは周りの目を気にし過ぎだ。
そうやって期待に応えようとしてるのかなんなのか知らねーけど。だからこのうざい髪の毛とか胡散臭い顔とかが出来上がるんだぞ。
好かれるように、嫌われないように、注意して怖がって、楽しいのか?
なんか可哀想な奴だな。

「お前はいろんなことに気を遣いすぎだろ。めんどくせーから俺には止めろ。」
それは難しいなーと笑いながら俺の前を歩いた。薄い色の髪は太陽の下では透き通って見える。
将来禿げそうだと憐れんでいると、でも、と言いながらミチルがクルリと振り返った。芝居じみたその動作に、お前はどこのヒロインだと突っ込みたくなったが、面倒なので止める。
「努力するよ。親友を怒らせたくないからね。」
からかうような、子供みたいな顔でミチルが笑った。


夏の青い空と、ミチルの白い笑顔。

不釣り合いなそれがとても綺麗で、でも何故か少し悲しくて、俺は頭を掻いた。


「あー、ありゃ、その場の流れってことでー・・・。」
「えー!?なんでだよ!!オレ結構嬉しかったのに!」
「えー、だってめんどーじゃん・・・。」
そう言うと、軽く小突かれた。それにやり返しているうちになんだか可笑しくなって、周りの目も気にせず二人でゲラゲラ笑った。



とりあえず、この面倒くさい男と、親友ってやつでもいいか。


目に涙を浮かべながら笑うのを見て、俺はそう思った。
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