You are one of my…

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分からない、分からないんだ。
こんな時どうすればいいのかなんて、オレは知らない。
だってこんなの―――、


□□□

(・・・そう言えば子供の頃、このキラキラを捕まえようとしてたっけ。)

埃っぽい階段に座って宙を眺めていたら、ふとそんなことを思い出した。
小さい頃は、キラキラと光る塵がなにか素敵なものに見えて、捕まえようと必死になった。なんで大人はこんなに綺麗なものが目の前にあるのに、喜びもしないんだろう、と不思議がったりもした。

曇り硝子から差し込む陽の光を受けて舞う埃は、確かに今でもキラキラと輝いている。けれども綺麗だとは流石に思わないし、ましてや捕まえて宝物にしようだなんて思わない。
あの頃と見ているものは同じはずなのに心が動かされないのは、それがただの埃だと知っているからか。そういえば、昔は不思議だったのに、その正体を知ってがっかりした物はたくさんある。これが、大人になるってことなんだろうな。
世の中の色々なことを知って、ワクワクしたり驚いたりしなくなって大人になるというのなら、大人には一体何が残っているんだろう?
オレには何が残るんだろう?


なんて、思わずセンチメンタルな気持ちになってしまうのは、誰もいない校舎っていうシチュエーションのせいだ。

安形が寝ている隙をみて、こっそりとやってきたこの特別棟。今は使われていないこの校舎は埃っぽくてすこし乾燥している。女の子と二人でなら雰囲気もあるだろうけど、一人で長居するような場所ではない。静かすぎて逆に落ち着かない。

さっさと今朝の手紙をどうにかして、教室に戻ろう。
家に持って帰るのも気分悪いし、剃刀も厄介だから、危なくないように封筒ごと捨ててしまえばいい。宛名も、当たり前だけど差出人も書いてないから、問題になることもないはず。
それで、黙って出てきたことを安形に怒られて、謝ってお終いだ。気まずいのも隠し事も、それですべて元通り。

よし、と軽くなった気分のままに、ポケットから封筒を取り出す。模様もなにもないシンプルなそれ。改めて持ってみると、今朝は気付かなかったけれど、中に剃刀以外にも何か入ってるようだった。

「わ、こわー。」

思わず出た独り言が階段に木霊するのを聞きながら、丁寧に折り畳まれた一枚の便箋を取り出す。

正直こういう嫌がらせのようなものには馴れているつもり。オレに好意を持ってくれている女の子の彼氏か何かからの、逆恨みの類だろう。

しかしまぁ、手紙までつけてくるとは執念深い。自分への恨みつらみをわざわざ読むのは気が進まないけど、読まずに捨てる訳にもいかないからと、軽い気持ちで手紙を開いた。
 
 
 
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